【セッションレポート】「脱・働く」#3–3つの資本「コネ・カネ・チエ」を動かし、労働者から投資家になる(後半)

人々に「はたらく」を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)をミッションに掲げるパーソルキャリア株式会社。 2020年4月2日、起業家や政策担当者など、多様なイノベーター達をつなぐ「Venture Café Tokyo」と共同で、トークセッションシリーズ「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」の第3回を開催しました。

(前半の記事はこちらから)

これからの時代の新しい「はたらき方」はどうあるべきか。旧来の働き方からの脱却、「脱・働く」を大きなテーマに、第3回目は「コネ・カネ・チエの資本主義」をテーマにトークを実施。NPO法人ZESDA代表である桜庭大輔氏をゲストに招きコネ・カネ・チエという3つの資本を意識し、循環・増幅させることの重要性を、これからの「はたらき方」と共に語っていただきました。

◆「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」について

不確実性の時代とも称される今。技術進化や人口動態の変化などにより、あらゆるゲームのルールが加速度的に大きく変わりつつあります。それに伴い、社会保障制度や終身雇用など戦後期に構築された様々なシステムも「制度疲労」に直面しているように思われます。

我々はこの来るべき時代において、どのようにはたらき、生きるべきなのでしょうか?

本シリーズではその考えをもとに、様々なステークホルダーを招きながら皆さんと繰り返し対話の場を持つことを通じて「日本らしい“はたらく“のその先」について議論を深めることを狙いとします。

この記事の内容
1. コネ・カネ・チエの動かし方について具体的なイメージを持つ
2. 自らの持つ資本をマネジメントしていくために持つべき「経営者視点」
3. コスパを大切にし、帳簿をつける
4. 今のあなたがもっているものでも感謝してくれる人はいる

桜庭氏:ではここからは、3つの資本を蓄積・循環させ、最小限の労働でカネを得る、言い換えると3つの資本の「カタリスト」になるにはどうしたら良いかについて、三点お話したいと思います。

一つ目は3つの資本が循環し、どういうときにカネが生まれているのかの「具体的なイメージ」を持つということです。

カネを生み出すためのコネやチエの動かし方は三パターンに尽きると考えています。

1つ目は「情報提供(inspire)型」。これはチエを注ぐパターンですね。2つ目は、AさんにBさんを紹介する「人材紹介(introduce)型」。コネを注ぐパターンです。そしてそれらを組み合わせて、プロデューサーとしての役割を果たす「組み立て(formulate)型」です。
(註:組み合わせるパターンについては、成り行きに応じてinspireとintroduceを繰り返していくのも含めて広くはproduceと呼びますが、あらかじめ意識的に仕組みを組み上げる行為を特にformulateと呼びます。)

3つ目は少しハイレベルなので、今日はあまりお話しません。1つ目と2つ目についてですが、これらはコンサルや人材紹介業が日常的にやっていることかもしれませんね。新しいお話ではありません。でも、じゃあ、みなさんが自分の身近でやっていますか?例えば、自分の同期を知らない先輩とセッティングする昼飯っていうのをどれだけやっていますか?といった時にけっこうやっていないんじゃないかな、やってないから視野や行動範囲がかなり狭まってしまっているのではないか、というのが僕からの社会に対するツッコミなんです。inspireとintroduceをちょっとやるだけでかなりの付加価値が生まれますし、見えてくる世界も大きく変わってくると思うんです。

では、少し具体例を見ていきましょう。

「情報提供(inspire)型」として、「データシティ鯖江」の事例を挙げます。これは、ITプログラマーの福野泰介さんがとある国際会議で「オープンデータ」の概念を得て、慶應大学教授・一色正男さんとタッグを組んで鯖江市長に提案した事例です。鯖江市にはもともとITや海外に関することはあまり浸透していなかったんですが、一色教授という権威者も関わることによってプロジェクトが進んでいます。一般的に、地方にはITや海外の知見といったチエが不足していますので、これらを持ちこむだけで付加価値が出せます。

次に「人材紹介(introduce)型」です。これはシンプルに「AさんにBさんを紹介する」というお話です。ZESDAが手がけた事例を紹介すると、宝生流家元の宝生和英さんが能の衣装について実は市松模様が地中海(ローマ)の方から来た模様であることを研究していてファッションに対する関心が大変高い人だとZESDAは知っていました。そこで、彼を東南アジアの若いデザイナーが参加するファッションコンテスト「サクラコレクション」を主催する田畑則子さんに「能楽堂でファッションショーやったらかっこよくないですか?」と囁きながら引き合わせたことで、能楽堂で国際ファッションショーが開催されたというものです。能と海外ファッションデザイナーという大きなギャップを橋渡しすることで、クリエイティブな成果を生むことができました。

価値がAさんからBさんに渡る際の基本的な型はinspireとintroduceの2つだと言えます。そして、この2つの型を体現していくのに大切なのは、僕が「マルチ・リタラシー」と呼ぶ「誰が何を知っているのか(Who knows what)」、「誰がどのくらいすごいのか」を複数の領域で知っていることです。前述の2つの事例はまさに、「マルチ・リタラシー」が発揮された良い事例ですよね。日本人は、つい専門性がないと勝負できないと思いがちです。ですが、専門性までは持たずとも、真にイノベーティブな付加価値を出すことはできるのです。これからは「マルチ・リタラシー」を発揮して、異なる人々を繋いでいくことが求められる時代になります。そして、橋を架けるこちらの業界とあちらの業界のギャップが大きいほど高い付加価値が出ます。

桜庭氏:次に重要なのが自身の持つコネ・カネ・チエに対して「責任を持ち、自分でマネジメントする」という自営業者的な視点を持つことです。なぜかというと、私・俺がやるんだっていうような「自分事化」した動き方でないと、情熱や魂が伴わず、注がれるコネもチエも死んでしまうからです。そして、「個人でやっていける」という手応えを得るなかで、自営業者的な感覚を養っていけば、ただの賃金労働者から準・自営業的なカタリストに目覚めていくんじゃないかなと思います。

「情報提供(inspire)型」と「人材紹介(introduce)型」を組み合わせて、誰かに価値を注ぎ「プロデュース」していくこと、即ちプロデューサーシップを発揮するにあたっては、小さなことから「実践」していくことが大切だと思います。まずは同僚に同僚を紹介するだけでも第一歩。その後は、その同僚が新しく知り合いを連れてきてくれるような関係性を築いていく。そして、知らない人と出会った時には、自分は自営業者としてコネやチエといった資本の「仕入れ」を行なっていると思って欲しいんです。昼休みのランチの時間に知らない人と話している時にも「へ〜」と思うだけでなく、この人は何を持ってる人なんだろう、何を求めている人なんだろう、という意識を高くもっておく。

なので、例えば「SEとしては自分は二流・三流だ」「自分は英語だってしゃべれるとは言えない」と思っている人でも全然大丈夫なんです。例えば、地方には、英語能力・ITスキルが全然ない。自分のITスキルや英語能力でも、地方と都会、地方の海外のギャップをかなり埋められるんじゃないか、という視点を持って欲しいですね。

桜庭氏:3つ目は「帳簿をつける」こと。コネとチエを仕入れ、コネとチエを支出する。出入りの都度、意識して記帳するのです。

そのときに大事な観点が「コスパ」です。例えば、前半でも述べたとおり、公務員の私にとって事務スキルのコストは非常に低いです。ですが、クリエイターなど比較的右脳で仕事をしているタイプの人たちは書類仕事が苦手でしょうがなかったりする。すると、私の事務スキルを彼らに提供すると、大きなパフォーマンスを発揮する。すなわち、すごくコスパがいいということになります。

こうしたひとつひとつの小さなやりとり、貸し借りにおいてもコスパが良かったか悪かったか、認識するのが大事です。自分が何かアクションを起こしたときに、相手がものすごく喜んでいたのか、そうでなかったのか記録しておくといいですね。自分の持っているコネとチエの棚卸につながります。

また、「コネ・カネ・チエ」の帳簿は、特定の人間と関係が深まってくると偏ってくるものでもあったりするので気を付けないといけません。例えば、僕はAさんにお世話になっているので、その分借方が増えていく。Aさんの方も「桜庭さんに貸しがあるな」と思っている。これは帳簿が合っている状態ですよね。
しかし、他人にしてもらったことへの感謝の気持ちがわかっていない人たちとの間では、帳簿が狂ってしまう。やってもらったことの実際の価値と主観的な価値がずれていく。そういう恩知らずな人は、どんどん人望を失い、入ってくる情報も減っていく。裏を返せば、「仁・義・徳」を守っている人たちのところにはやっぱり情報や人脈が集まってくるということになるわけです。

まとめると、こまめに、人を紹介したり、何でも教えてあげたりする。そのときにコスパがよかったかどうかを考える、そういったことを地道に行なっていくのが重要だということです。

モデレーター:ありがとうございます。すごく具体性があり方向性が見えるプレゼンでした。参加者の方から質問をいただいたので共有しますね。「カネ・コネ・チエを繋いだ後に、価値が生まれたとどう判断するのでしょうか?」

桜庭氏:情報や人脈を提供した相手に「どれくらい嬉しかったか」をダイレクトに聞けばいいと思います。フランクに聞けるような関係性づくりも大事かなと思います。

モデレーター:「専門性に対する認識は海外ではどうなのか」という質問もいただいています。

桜庭氏:先ほど申したように、日本人は専門性ばかりを大切にするきらいがあります。もちろん、専門性が大切でないわけではない。ただ、「その専門性を極めようとしなくても、大きなバリューを出せる場所がある」と言いたいです。今のあなたが持っているスキルで十分感謝してくれる人が世界のどこかに必ずいる。それは全世界共通して言えることだろうと思います。

本日のプレゼン内容はZESDAの法人活動において実践していますので、当法人のHPも見ていただけたら嬉しいです。特にウェブ雑誌PLANETSで連載中の「プロデューサーシップのススメ」では様々なカタリスト、プロデューサーとしての活躍の講演録を発信していますのでお読みいただけたら幸いです。本年中に書籍として出版する予定です。

モデレーター:ありがとうございました!

次回のセッションはAfter/Withコロナ時代のパラレルキャリア論

脱・働く第5回となる 5月21日(木) 19:00–20:00 オンラインは、改めてZESDA代表 桜庭さんとおとえん 相馬さんをお招きして、「After/Withコロナのパラレルキャリア論」をテーマにセッションを行います。ぜひお気軽にお申し込みください。

イベントページURL: https://thursdaygathering-20200521.peatix.com/view

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