【セッションレポート】EMERGENCE #3 — Withコロナの世界地図~次世代のヘルスケア~
「Connecting the dots. — 最先端のサイエンスとテクノロジーで、皮膚疾患患者さんによりよい明日を。」をミッションに掲げるLEO SCIENCE & TECH HUBの支援のもと、ライフサイエンスに関わるセッションシリーズ「EMERGENCE — Creating the future of Japanese Life Science Ecosystem」の第3回セッションが2020年5月28日にThursday Gathering(開催:Venture Café Tokyo)において開催されました。
多角的に未来を予測し、次世代の技術、新規事業等を投資という形で支援するVenture Capital(VC)。当日のセッションでは、新型コロナウイルスの感染拡大により社会全体が大きく変化している中、これからのヘルスケアはどのように変わっていくのか、またどのような変化が既に起こっているのか、Fresco Capital鈴木さん、Digital Garage宇佐美さんのお二人のVCをお招きして、事例と共に議論を深めました。
以下、当日の議論要旨
・ヘルスケアの中でも身体的、精神的な面に加え社会的(対人関係など)にも健康であるウェルネスという概念は、今新しい世代(Generation Z)から特に注目されている。
・この新しい価値観を持った世代に加え、新型コロナウイルスによる人々の行動変容により、さらにウェルネスは広がりをみせる。自宅でエクササイズ出来るフィットネスバイクを開発するスタートアップが上場し、1兆円を超える企業価値となっていることもその証であり、このホリスティックに捉えられるウェルネス市場は年率10%の成長を遂げている。
・ウェルネスが重要視されるWith コロナ時代においては、本質的なウェルネスを意識することにより個々人がエンパワーし、社会においても様々な分野から知恵を出し合いオープンに協力しながら今回のような危機的状況を乗り越えていくことが必要である。
・また、パンデミックのような危機に直面しながらも、一時的に緩和される規制、加速する産学連携等をチャンスと捉え、ダイナミックに新たな社会を築き上げるマインドを持つことも重要である。
<新型コロナウイルスの感染拡大の影響によるあらゆる規模での変化>
・暮らしにおける社会的距離(social distance)の意識
・企業におけるビジネスモデルの再構築や新たなニーズに対応した新規事業
・テレワークという働き方がもたらす分散型社会やあらゆる分野におけるデジタル化
<ヘルスケアにおける新たなニーズ>
・健康を維持すること(wellness/wellbeing)
・ワクチンの開発、AIによる治療薬の早期発見、バーチャル臨床試験、高精度の検査法
・自宅療養中患者の遠隔モニタリングやオンライン診療
・新たなテクノロジーによる治療や予防
・メンタルヘルスの維持
<事例紹介>
・新たなモニタリング技術(黒田)
皮膚に貼られたパッチにより汗に含まれる成分を分析し、急性増悪を早期に検出する(EPICORE BIOSYSTEMS)。医療従事者が使用するマスクにパッチを貼ることにより、彼らの健康状態をモニタリングする技術も開発中。
医師が患者と直接接触せず壁に取り付けられたディバイスにより患者の呼吸状態をモニタリングできる技術を開発(EMERALD)。アトピー性皮膚炎患者の掻破行為を検出するなど、様々な分野での応用が進められている
・オンライン診療(宇佐美)
新型コロナウイルスの感染拡大による規制の緩和、対象疾患の拡大などにより急激に増加している。外出規制の緩和後にどれだけ根付くか注目されている。またデジタル化されたデータを二次的に活用するビジネスの展開も期待される。
・バーチャル治験(宇佐美)
デジタル化が発展途上の臨床試験においては、医療機関への訪問規制により計画通りに進められない。信頼性の高いデータを被験者本人から遠隔で測定できる技術により今後バーチャル化していくことが期待される。米国では既に緊急性の低い疾患を対象にバーチャルで治験を実施するスタートアップも現れている(Science 37)。
・Digital Therapeutics(宇佐美)
精神疾患を対象とした治療用アプリを開発(AKILI)。臨床試験も実施済みであり、米国では既に承認されている。医師がアプリを処方する新しい医薬品の形が生まれている。メンタルヘルス、生活習慣病の領域にも開発が進んでいる。新型コロナウイルスの状況によりさらに開発が加速している。
・ウェアラブル(鈴木)
従来のウェアラブはfitbitに代表されるように体の状態を数値化してきた。これからは得られたデータを分析しユーザーへフィードバックする、より処方性が高いウェアラブルが開発されている(WHOOP)。得られたデータを分析、解析し製薬企業へ提供するなど、クロスボーダーに協業も進んでいる(Evidation Health)。
・メンタルヘルス(鈴木)
瞑想アプリを開発したSUがユニコーンとなり注目を浴びている(Calm)。自粛中やテレワークでの精神健康状態が気にかけられるようになった。カウンセリングのマッチングプラットフォームや企業向けに従業員の健康状態を数値化するサービスも開発が進んでいる。
◆登壇者
・鈴木 絵里子氏(Fresco Capital)
金融業界、米国発商業用ドローンのSUの日本進出のCountry Manager、ミスルトウで投資とクロスインダストリの経験を経て現在に至る。ウェルネス/Wellbeingのコミュニティも運営する。グローバル(全米、欧州、東南アジア含む)に投資しており、主に生き方に係る分野(働き方、教育、ヘルスケアテクノロジー)を中心に特に課題解決型のSUへの投資を行う。体制は、2012年から世界各国にチームメイトがいる分散型でグローバルに活動する。
・宇佐美 克明氏(Digital Garage)
IT分野、海外(ジャカルタ)にてSUを経験し、現在に至る。ヘルスケアを担当し、Digital HealthやDigital Therapeuticsへ投資を行う。海外(ボストン)経験もあり、現在は東京からグローバルに投資を行う。米国にもCoworking Spaceを設け、ベイエリアへの投資も行っている。
・モデレーター 黒田垂歩氏(LEO Science & Tech Hub)
次回のセッションは「インキュベーター・アクセラレーターから学ぶビジネスディベロップメントのポイント — ライフサイエンス編」
EMERGENCE 第4回となる 7月2日(木) 19:00–20:00 (オンライン)は、ライフサイエンス分野でアクティブに活動するインキュベーター・アクセラレーターのキーパーソンをお呼びして、彼らが考えるビジネスディベロップメントのポイントや偶発的な出会いの大切さについて議論を深めます。ぜひ、奮ってご参加ください
イベントページURL: https://thursdaygathering-20200702.peatix.com/
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