【セッション・レポート】EMERGENCE #1 - 日本のライフサイエンスの未来を創るために
「Connecting the dots. — 最先端のサイエンスとテクノロジーで、皮膚疾患患者さんによりよい明日を。」をミッションに掲げるLEO SCIENCE & TECH HUBの支援のもと、ライフサイエンスに関わるセッションシリーズ「EMERGENCE - Creating the future of Japanese Life Science Ecosystem」のキックオフセッションが2020年2月27日にThursday Gathering(開催:Venture Café Tokyo)において開催されました。
当日は”日本のライフサイエンスの未来を創るために”というテーマのもと、5人のゲスト・スピーカーをお呼びして、ライフサイエンス分野で強力にイノベーションを生み出すボストンのエコシステムを日本の状況(地理的な特徴、ネットワーク、周囲のメンター、政府が投資するアクセラレーションプログラム、グラントの数の多さ等)と比較した上で、研究レベルの高い日本において、日本らしいエコシステムを構築するためにあるべき取り組み、研究者のマインドなどについて、登壇者それぞれの視点から議論を深めました。
◆EMERGENCE — Creating the future of Japanese Life Science Ecosystemについて
科学は社会の発展の礎です。日本の基礎研究力は世界的にも高いものがありながら、研究者のキャリアパスの在り方や大学発イノベーションを産業化する方法論の欠如など、持続可能な形で研究をし、その成果を社会実装する体制が整っているわけではありません。少子高齢化という大きな課題に世界のどの社会よりも早く直面する日本においては科学の活用が欠かせません。また、ヘルスケア分野におけるデジタル技術との融合は大きなチャンスでもあり、世界からの日本に対する期待も高いものがあります。
そこで、EMERGENCEでは、定期的にライフサイエンスのキーイノベーターをお呼びし全員で議論を深めることで、日本のライフサイエンスの未来を創るムーブメントとコミュニティを創出することを狙いとします。
以下、当日の議論要旨
<研究者の持つべきマインドセット>
- 研究者には従来の“枠”を破壊し、もっとダイナミックに生きて欲しい。研究者が、研究の目的が何なのかを他者と考えることは重要であり、ネットワーキングに足を運ぶなどまず行動に移すことが大切である。そしてこのような研究分野・所属をまたぐ繋がりが新たなイノベーションを生む土壌となる。
- 一方、このようなマインドを持つ研究者を増やすため、若手研究者にアントレプレナーシップなどの研究以外の教育を行うことも重要である。
<ライフサイエンススタートアップへの支援の状況と特有の課題>
- 大学発国内ベンチャーの多くはライフサイエンス関連が占めており、日本の礎であるにも関わらず、博士号取得者数や論文数は米国、中国に比べ少なく、政府研究開発予算(医療・健康分野)も米国の約1/18である。しかし、米国とは国、政府予算の規模が異なり、対GDPで見るとそこまでの差はなく、社会保障費が増大する日本において科学技術関係予算が減らされていないことはある程度考慮されているとも言える。
- ライフサイエンスは規制産業であり、上市するまでに巨額の投資が必要となる。ギャップ(シーズはあるが、投資がなく実用化まで進まない状況)を埋めるための取り組みとして、基礎研究の強化、臨床試験の効率化、条件付き承認の推進、などが上げられる。企業等との共同研究も有効であり、成功・失敗例を増やしていくことも大切である。
<今何ができるか>
- 人的ネットワークの構築:しかし、日本にスタートアップへのサポートは不十分である。まずは低コストで効果が期待できる“ネットワーキング”の強化は重要であろう。カリフォルニア(CA)では優良大学は距離的に離れているにも関わらず、強力な人的ネットワークが構築されている。東京近郊や関西エリアの都市間距離は実はCAと同程度であり、CAのようなネットワークが出来ないという事はないだろう。優秀な研究者ほど多忙であるが、外部に情報を取りに行かなければ生き残れない。今回のセッションのようなネット配信を通した情報発信・交換は有効な手段ではないか。
- 特許を例に上げると、現状多くの大学発の特許はビジネスに繋がらない(新規性がない、安易に真似出来る)。特許の“質”を上げるためには、特許に関する教育、専門家とのネットワークが必要である。
- ベンチャーの視点では、コミュニケーション能力、ビジネス能力に長けている社長候補が求められている。メガファーマには各分野の専門家が揃っており、そういった人が大企業から市場に出てもらうことも特効薬になり得るのではないか。
- マインドセットの”進化”:研究者は従来の“枠”を破壊し、様々な背景を持つ人と共同研究を進めることでより面白い研究が進む。社会課題の解決という目的意識を持ち、自ら資金を調達してくるなど研究者のマインドを“進化させる”ことも必要であろう。一方、日本の投資家にはリスキーな研究にも資金をつぎ込む姿勢を持って欲しい。
- 外部への発信:基礎研究の成果の結実には長期的蓄積が必要であり、成功確率だけではなく長い時間軸で見る必要がある。研究の重要性を、研究者からもっと外部へ発信することで一般の人にも伝わるのではないか。
▼当日のセッションフル動画
次回のセッションは2020年4月9日。
全体感を語る第1回から一転、第2回は「最新サイエンスの注目スタートアップ」と題してより挑戦者の立場に迫ります。メタジェンセラピューティクスの中原さん、Icaria Inc.の小野瀬さんをお呼びして、それぞれの持つ技術やビジネスはいったいどのようなものなのか、起業家はなぜスタートアップの道を選んだのかなど、お二人の見る地平をお伺いします!是非、ご都合つけば、ご参加ください!(オンライン予定)
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