【セッション・レポート】EMERGENCE #2 — 最新サイエンスの注目スタートアップ

Venture Café Tokyo
8 min readMay 18, 2020

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「Connecting the dots. — 最先端のサイエンスとテクノロジーで、皮膚疾患患者さんによりよい明日を。」をミッションに掲げるLEO SCIENCE & TECH HUBの支援のもと、ライフサイエンスに関わるセッションシリーズ「EMERGENCE — Creating the future of Japanese Life Science Ecosystem」の第2回セッションが2020年4月9日にThursday Gathering(開催:Venture Café Tokyo)において開催されました。

◆登壇者
・中原 拓氏(メタジェンセラピューティクス株式会社 代表取締役CEO)
・小野瀨 隆一氏(Icaria Inc. 代表取締役CEO・共同創業者)
・西ヶ谷 有輝氏(株式会社アグロデザイン・スタジオ 代表取締役社長)
・モデレーター 黒田 垂歩氏(LEO Science & Tech Hub ディレクター)

当日のセッションは今でこそ注目を集めるスタートアップに成長を遂げた登壇者達が、なぜスタートアップの道を選んだのか、過去の失敗談も交えスタートアップの意義をどう捉えているのか議論を深めました。
結果、それぞれフィールドは違えど、スタートアップという共通の世界の中で艱苦奮闘し、似た経験や世界観を持っていることが浮き上がるなど、「共有」することの意味を感じるセッションとなりました。
EMERGENCEでは今回のように個人の貴重な経験を他者に共有していくことで、人と人を繋げ、豊かなコミュニティ創りに励んでいきます。

◆EMERGENCE — Creating the future of Japanese Life Science Ecosystemについて

科学は社会の発展の礎です。日本の基礎研究力は世界的にも高いものがありながら、研究者のキャリアパスの在り方や大学発イノベーションを産業化する方法論の欠如など、持続可能な形で研究をし、その成果を社会実装する体制が整っているわけではありません。少子高齢化という大きな課題に世界のどの社会よりも早く直面する日本においては科学の活用が欠かせません。また、ヘルスケア分野におけるデジタル技術との融合は大きなチャンスでもあり、世界からの日本に対する期待も高いものがあります。

そこで、EMERGENCEでは、定期的にライフサイエンスのキーイノベーターをお呼びし全員で議論を深めることで、日本のライフサイエンスの未来を創るムーブメントとコミュニティを創出することを狙いとします。

以下、当日の議論の要旨

<どうしてスタートアップの道を選んだのか?>
小野瀨さん
・スタートアップに興味を持ち、人類の進歩に寄与するような起業家になりたいという思いがあった。
・がん患者が身近にいて現状を改善したいと思った。
中原さん
・米国でバイオベンチャーのスタートアップに6年間携わるも、失敗した。帰国後は大手の新規事業部で投資、育成などサポートする側になったが、過去の失敗を活かしたいと思い、再度起業を決めた。
・大手企業で働くよりもスタートアップの方が自分の性に合っている。
西ケ谷さん
・医薬品も農薬も上市されるものはごく一部であり、自分の研究してきたものを上市に近づけるのは起業することだと思った。
・医薬品の新薬は6~7割がスタートアップ由来であることに比べ、農薬はほとんど自社開発で行われてきた。そこにイノベーションのチャンスがあると思った。
・シリコンバレーを訪問した際、幼いころのスタートアップに憧れる思いが蘇ってきた。

<スタートアップにおいて一番してはいけない失敗とは?>
小野瀨さん
・創業当初、仲間を失ってしまった経験から、人を管理するのではなく、ポテンシャルを解放するマネジメントの重要性を感じた。
中原さん
・最初にビジネスとしての戦略をしっかり詰めていなかった。
西ケ谷さん
・一番多いと言われる資本政策上の失敗を避けるため役員も自分ひとりだが、それ故に多忙を極めている。

<ライフサイエンスにおけるスタートアップの意義>
中原さん

・2018年には薬剤のOriginator(発見者)の2/3はスタートアップ出身であり、Filing(承認申請)した数も大企業を上回っていた。米国に比べると日本はまだ少ないが、近年、他業種からの参入も増え、また起業に関する知識を持った研究者も増加してきている。
小野瀨さん
・大企業は資金力、人材は豊富だが、研究者と密にコラボレーションしていくのは稀である。その点、スタートアップは研究者のそれまで積み上げてきた知見を引き出し、商業化に活かすことが出来る。一方で研究者とビジネスはそれぞれの視点が異なるため、特に大学発ベンチャーにおいては、研究室から外に持ち出すこと(技術移転)がハードルになり得る。
・Equity financeを行うことで1プロジェクトにかけられる資金が大企業より優位に上回ることもある。
西ケ谷さん
・研究者は論文を出すことを一番に考えるが、スタートアップでは企業価値を高めることを主軸におかなければならない。このバランスを取ることが難しく、苦労した。これからスタートアップを進めていく人たちがいかにうまく両立していくかが重要と考える。

<スタートアップに向いている人とは?>
小野瀨さん
・変化に対する柔軟性を持ち、フィードバックを素直に受けられる人。
・目的に向かって一直線に物事を進められる目的達成主義
中原さん
・PhD取得者。すなわち、自ら問題提起し仮説、検証するスキルを持っている人。
西ケ谷さん
・IT系では考えるより行動する人。創薬系では時間がかかっても事業化出来る戦略をしっかり考えられる人。

<企業紹介>

株式会社アグロデザイン・スタジオ:世界中でもベンチャーキャピタル(VC)から資金調達に成功している農薬ベンチャーは限られているが、そのうちの1社。農薬を使った栽培をより安全にすることをビジョンに掲げる。

Icaria 株式会社:世界初、exosome(情報伝達通信物質)を99%以上尿から捕捉し、micro RNAの解析に成功した企業。海外のトップVCからも注目されており、近く米国への展開も予定している。がん細胞は普通の細胞に比べ多くexosomeが分泌されると言われており、少ない濃度でも検出できる当社の優れた捕捉技術により、がんの早期発見および治療の最適化を目指す。

メタジェンセラピューティクス株式会社:日本を代表する研究者を揃えた腸内細菌で創薬するスタートアップ。健康志向の人の間では既に一般的になった腸内細菌だが、健康を保つだけでなく、消化管疾患をはじめ自己免疫疾患、中枢神経系疾患などにも関与していることが分かってきた。国内では腸内細菌で創薬するスタートアップは存在しなかったが、近年大手製薬メーカーとの協業も進んでいる。

次回のセッションは2020年5月28日。

第3回は「Withコロナの世界地図~次世代のヘルスケア~」と題し、Fresco Capitalの鈴木氏とDigital Garageの宇佐美氏をお呼びして、議論を深めます。鈴木氏からはコロナによって加速している「Well-being」に関する市場と投資の動向についてお伺いします。また、宇佐美氏から遠隔診療やモニタリングなどデジタル・テクノロジーがどのようにヘルスケアを変容させうるのか、ボストンの事例も交えながら、お話をお伺いします。是非、ご都合つけば、ご参加ください!

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