【開催レポート】OIC CONNÉCT OPENING NIGHT-イノベーションは社会と繋がるキャンパスから-

Venture Café Tokyo
15 min readAug 3, 2022

起業家や研究者、学生など多様な人が交流し、学びの機会を創出する「OIC CONNÉCT」のOPENING NIGHTを2022年7月13日(水)、立命館大学大阪いばらきキャンパスにて開催しました。OIC CONNÉCTは10月以降、毎月の開催を予定し、今回はそのKICK OFFを兼ねて企画しました。当日、OIC CONNÉCTには約250人(うち、オンライン約130人)が参加し、イノベーション創出拠点として新たな一歩を踏み出しました。

冒頭、学校法人立命館の仲谷総長が挨拶、社会課題解決に挑戦するスタートアップ人材の育成などについて抱負を述べました。また、大阪府 商工労働部 中小企業支援室 商業・サービス産業課の中谷敬氏からは、新たなイノベーション・エコシステム創出拠点としてOIC CONNÉCTへの期待が寄せられました。
続いて、Venture Café Tokyo Executive Director の山川恭弘(バブソン大学准教授)が基調講演を行い、一部の天才がイノベーションを起こすのではなく、さまざまな人が集まり連携し、それらを支える制度が整うことでイノベーションを生み出し続けるコミュニティができることなどが語られました。
次に、大学・行政・企業・起業家・投資家のそれぞれの視点から、OIC CONNÉCTを通じて広がる未来についてパネルディスカッションを行いました。
最後に、慶應義塾大学に在籍しながら、環境活動に取り組む露木しいな氏が、環境に目を向けるようになったきっかけや今後の展望について講演され、OPENING NIGHTは終了しました。
なお、セッション会場に隣接して設置したネットワーキング会場(コミュニケーションスペース)では、学生を含め来場した多くの方が交流し、新たなコミュニティやネットワークを通じた社会共生価値の創出が、今後、大いに期待される一夜となりました。

これからも、OIC CONNÉCTを通じて、地域や世界の方々、行政・企業・起業家・投資家の方々などがシームレスにつながるコミュニティを育みながら、さまざまな社会的な課題の解決を目指してまいります 。

OIC CONNÉCTでは、多様なイノベーター達による講演やイノベーションを加速させるワークショップ等を通じて参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験を梃子にネットワークを拡げることが出来ます。また、学生、地域の人々、起業家や何か新たなチャレンジを模索する人、研究者、投資家など、イノベーションに少しでも興味があれば「誰でも」参加可能であることが特徴です。

OPENING TALK

OIC CONNÉCT OPENING NIGHTの冒頭では、学校法人立命館 仲谷総長の挨拶に続き、大阪府 商工労働部 中小企業支援室 商業・サービス産業課 課長 中谷様からのOIC CONNÉCTへの期待、そしてVenture Café Tokyo Program Directorである小村よりOIC CONNÉCTの楽しみ方についてのオリエンテーションが実施されました。

登壇者:
仲谷 善雄 氏
= 学校法人立命館 総長
中谷 敬 氏
= 大阪府 商工労働部 中小企業支援室 商業・サービス産業課 課長
小村 隆祐 氏
= Venture Café Tokyo Program Director

大阪では、2020年7月14日、自治体・企業・大学による「大阪スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」が、京都、ひょうご・神戸の各スタートアップコンソーシアムとの連携により、内閣府が進める「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」の 「グローバル拠点都市」として選定されました。また、2022年をスタートアップ元年として日本全体でスタートアップ・ベンチャーの気運が高まる中、大阪・京都・滋賀に立地する立命館大学では大学発ベンチャーが多数輩出されており、大阪いばらき市でOIC CONNÉCTが開かれることは大阪府のみならず京都府など近隣府県にとっても、新たなイノベーション・エコシステム創出の大きな1歩として捉えられます。

KEYNOTE SPEECH vol.1

最初のKEYNOTE SPEECHでは、起業家教育全米№1のバブソン大学准教授であり、Venture Café Tokyo Executive Director、CIC Japan Presidentを務める山川より、Venture Café Tokyoの活動と、バブソン大学で教える起業家教育について講演がなされました。

登壇者:
山川 恭弘 氏
= Venture Café Tokyo Executive Director /Associate Professor at Babson College

Venture Café について

Venture Café は現在、世界6カ国11都市に展開をし、アジアでは現在、日本のみで活動をしております。東京、つくば、名古屋、岐阜、そして2022年7月より大阪・立命館で定期的にGathering(集まる)することで、イノベーションを生み出す・加速させるきっかけを醸成して います。また、Venture Café Tokyoはイノベーション創出機構として、①出会い・繋がりの演出②挑戦者・応援者・支援者間の信頼構築③リソース(ヒト・モノ・カネ)の融通をする場として、姉妹組織であるCIC tokyoと共にThursday Gatheringという名前で毎週木曜日に定期的にみなさんが集まる場の運営をしています。

なぜイノベーションを生み出すために集まる必要があるのか

これまでのイノベーションは、孤高の天才による発明によって生み出されてきました。

例えば、iPhoneを生み出したAppleのスティーブ・ジョブスや、世界に新しいエンターテイメントを創出したウォルト・ディズニー。彼らは、1人で始め、圧倒的カリスマ性を魅せることによって、世界のイノベーションを牽引してきました。しかし、これからのイノベーションでは、一緒に考え、生み出すことが必要不可欠となってきます。Venture Caféの姉妹組織であるCambrige Innovation Centerでは、Barn Raising(長屋・集合住宅)を体現しており、起業家だけではなく、行政、大学、VC、銀行、大企業のオープンイノベーション室などが混ざり合うことで、多くのイノベーションを生み出してきました。そこでイノベーションが生み出され続ける秘訣は、①物理的距離の近さ②産業を跨いだ多様な組織間での連携、そして③定期的なミートアップ・プログラムによって成り立っています。

これからのイノベーションは、Social Capital(社会関係資本)が重要であり、「何を知っているか」ではなく「誰を知っているか」によって多くのイノベーションが生み出されてく。まさに、イノベーションを生み出すPower of CommunityをVenture Café Tokyoが運営しているということになります。OIC CONNÉCTでも同様に、多くのイノベーションを生み出すコミュニティを、みなさんと一緒に創っていきましょう。

CIC TOKYO

バブソン大学で教える起業家精神とは

また、2019年に100周年を迎えたバブソン大学にて教えている起業家教育において伝えている大事なことは、以下の3つです。

  1. Action Trumps Everything
    行動が全てに勝る。まずは行動してみる。
  2. Anticipate Tolerate Embrace Failure
    失敗は当たり前。失敗を自分の中で定義をし、可能な限りの行動をしてみる。失敗しても、受け入れ、どうすれば良いかを考えた上で、再度行動をする。
  3. Ask Trust Enroll Others
    周りを巻き込む。もしくは、周りに巻き込んでもらう。

“起業とはやりたいことを実現するための1つの手段に過ぎない。果敢に挑戦し続ける、学び、成長し続ける。この精神こそがアントレプレナーシップであり、社会を生き抜く力、革新する力、世界を変える力になる。「Change the world。世界を変える」というのは難しく聞こえるかもしれない。でも、「Change your world」とすると、あなたの世界を変えるだけになる。それが、「Change their world」となり、世界を変える力になる。自分を変えるぞ、準備はいいか?と思えば、一歩ずつ行動ができる。みんなで挑戦しよう。”

と力強い言葉で基調講演が締めくくりました。

PANEL&CONNECTING SESSION

イノベーションに重要と言われる5つのステークホルダーである大学、行政、企業、起業家、投資家の5者に起業を取り巻く支援環境や制度について対談いただきました。また、その対談を通じて、OIC CONNÉCTの価値でもある「偶然の出会いによるイノベーションの創出」を体現いただきました。

登壇者:
福岡 洋一 氏
= 茨木市 市長
中村 正敏 氏
= 株式会社NTT Sportict 代表取締役社長
後藤 友美 氏
= 株式会社SUSTAINABLEME 代表取締役社長
関 兵馬 氏
=栖峰投資ワークス株式会社 代表取締役
山内 瑠華 氏
立命館大学国際関係学部4回生/ラピスプライベート 代表

モデレーター:
林 永周 氏
=立命館大学経営学部 准教授

多様な創業支援制度とその現在地

大阪府茨木市では、「飲食店を立ち上げるためのテナントを探します。」ということから、スタートアップ企業が8畳1間のオフィスから始めて上場するまで幅広く育成支援を行っていることや、「彩都」と呼ばれる地域に、住宅や利便施設のほか、彩都ライフサイエンスパーク(LSP)を中心にライフサイエンス分野の研究所や企業の事業所が集積し、10年以上支援を行っていることが紹介されました。市全体としては、スタートアップが上場できるような支援施策が整いつつあるため、上場以降の拡大支援に力を入れていくと福岡市長より語っていただきました。

中村様より、大手企業でオープンイノベーションを推進してきた立場と、自分でベンチャー企業を作った立場の経験を通し、そこには180度、全くの違いがあることをお伝えいただきました。例えば、大手企業では人件費を大きく考えないが、スタートアップでは人件費、家賃から全て考えなければいけないことなど、一言で伝えることは難しいが、自身で創業してからのこの2年間は大きな経験になったとお話いただきました。

様々な創業支援があると知らない中で起業をした後藤様は、ある程度は最初から知っているべきだという反面、自分で全部やってみるのが大切である、と起業家ならではのご意見を述べていただきました。また、ご自身の経験から母子家庭で起業をする難しさ、また自社サービスに対する想いを語っていただきました。

関様には、ベンチャーキャピタルという立場から、「スタートアップ支援の市場は、ここ数年で急成長しており、1兆円規模の投資額になるのではないかと思っているくらい、大きくなってきている」とご自身の肌感覚も含めてお話いただきました。一方で「起業家からベンチャーキャピタルの扱い方がわからないという声を多く聞くようになったため、もっとベンチャーキャピタルが身近な存在になっていくようにしないといけない」という課題意識についても述べていただきました。

自ら活動団体を立ち上げ、今後の起業も検討している大学生の立場から山内様は、大学や民間企業が大学生向けに行う起業支援の現状について、お話いただきました。大学の起業支援では、広報課を通じてメディアに出演することで、仲間を集めることを助けて頂き、更には立命館大学校友会(同窓会組織)による奨学金制度での資金調達と、立命館大学ならではの支援の厚さについて語って頂きました。また、各民間企業が行うアクセラレータープログラムや起業塾等に通うことで、ご自身の知見を深めながら、資金調達と事業の成長を進めることができたという体験を教えていただきました。

その他にも、行政と大学の連携や、これからの大学生のキャリアについてなど、多くのテーマに関する談話と会場からの質問により、多くの方が真剣に耳を傾けていました。

KEYNOTE SPEECH vol.2

最後のKEYNOTE SPEECHでは、慶應義塾大学環境情報学部に在籍しながら環境活動家、起業家として活躍する露木しいな様より、環境活動に取り組むことになったきっかけや、現在の活動についてお話いただきました。

登壇者:
露木 しいな 氏
=環境活動家|化粧品開発者|慶應義塾大学環境情報学部

環境に目を向けるようになったきっかけとは

遡ること小学生の時に山村留学をし、米を自分で育て、皿を土から作り、人は自然がないと生活ができないということを、当時より感じていたそうです。英語ができるようになるために高校でバリ島のグリーンスクールに留学。開放された空間で学ぶために壁がなく、学ぶだけではなく行動を伴った教科書のない課外授業が連続し、バナナの葉をお皿に使うことで水と石鹸を使わない仕組みによりゴミを排出しない学校に驚きが隠せなかったようです。そして、同級生も含め、「行動するのに大人になるまで待たなくていい」ということを学びとして得たということです。一番最初は、肌の弱い妹のために「肌に良いものを作りたい」ということではじまった研究活動も、高校3年間を通じ、生産から消費、そして処理をするまでの過程で「処理」が一番の課題と感じ、「環境に良いものを作りたい」という思いに変化していたそうです。その中でも、口紅を作ったきっかけは、女性が平均7本の口紅を食べているという事実と、多くのプラスチックと動物素材を扱っている事実を変えるため。実際にどれだけの素材や量を扱っているかを皆さんに知ってもらうために、口紅を作れるキットを開発されています。

環境活動家として活動する理由と今後の展望

また、COP(気候変動枠組条約締結会議)に参加し、同世代の方の活躍から刺激を受けた一方で、日本の現状を考えてみた時に、日本での環境に対する行動の少なさに目が向くようになったそうです。報道の自由度は他国と比べ日本は低く、報道をしたとしても興味のある方にしか情報が届かない。それであれば、興味・関心の芽が育つタイミングの学生に向けて伝えることで、環境に対する意識を持つ人を1人でも増やせることができるのではないかと思い、180箇所に及ぶ学校での講演活動を既に行ってきているそうです。

最後に、今後の展望についてお話いただきました。

“講演活動以外にも、市販できる化粧品を生み出すことができればと思い、現在商品開発を行っています。「1人じゃ何も変わらないけど、1人からしか何も変わらない。これからも自分から動いていければと思います。」”

力強いお言葉にて、セッションを締めくくりました。

最後に

現地参加者とオンライン視聴を含め、250名程の方にご参加いただいた OIC CONNÉCT。

現地では交流も活発に行われ、まさにVenture Café Tokyoが掲げる“Connecting Innovators to make things happen”の気運が感じられる夜となりました。地域や世界の方々、企業、団体とシームレスに、リアルとデジタルでつながることで、社会共生価値を創造し、さまざまな社会的な課題の解決を目指す「ソーシャル・コネクティッド・キャンパス」を目指す立命館 大阪いばらきキャンパスで、多くのイノベーションを皆さんと一緒に生み出していきましょう。

Learn. Connect. Share.
次回は10月を予定しております。皆様のご参加をお待ちしています。

◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café
Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。

http://venturecafetokyo.org/

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