HAPPEN #11: LikePayイーゴリ・ヴォロシオフさん

今回フォーカスするのは、東京大学大学院に在学中に日本で起業したIgor Voroshilov(イーゴリ・ヴォロシオフ)さんです。昨今、注目が高まっているノ―コードに関するセッションやワークショップをVenture Caféでも何度も開催してきました。そのこともあってか、活躍の場はさらに拡大中だといいます。どのようなHAPPENがあったのでしょうか。

大学院在学中にIT系スタートアップを設立

――日本語もとてもお上手ですが、簡単な自己紹介をお願いします

出身はロシアで現在26歳です。モスクワ大学で国際関係を専攻し、第2外国語として日本語を学びました。2015年には交換留学生として半年間、上智大学に留学。 ヨット部に所属して毎週金曜日の夜から江ノ島に出かけたり、バイトをしたり、ロシア関係のカンファレンスのお手伝いをしたり、新しい友達もたくさんできて本当に充実していました。この半年は自分の人生で一番楽しかったといえるかもしれません。

ぜひまた日本で暮らしたいと思い、モスクワ大学を卒業後、奨学金を得て東京大学の大学院に留学しました。大学院に在学中の2018年に東京でLikePayというスタートアップを立ち上げました。

LikePayはITサービスを提供する会社です。当初は個人がSNSに投稿するレストランや美容院、ネイルサロンなどの情報を集客に活用するアプリをメインに展開していました。エンジェル投資家やVCからも資金調達を行い順調に成長しつつあったのですが、コロナ禍で事業を見直す必要が出てきました。自社サイトをリニューアルする際、コーディングを使わずにシステム開発できるノーコードに出会い、新規事業としてノーコードを教えるオンラインスクール「LikePay.dev Academy 」とコミュニティを開設しました。

――ソースコードを書かずにソフトウェアを開発できるノーコードは、最近は日本でも注目が高まり、多くの領域で変化を起こすと言われているようですね。

ノ―コードなら、もともとエンジニアではない自分のような人間でもウェブサイトやアプリなどを作ることができます。当社がノ―コードで作ったウェブサイトをリリースしたのは昨年の9月くらいです。ノーコードのウェブ開発ツール「Webflow」は2019年にシリーズ A で約70億円調達しているすごいツールで、 海外では有名なのに当時は日本ではほとんど知られていませんでした。ウェブサイトの開発というとみんなWordPressを思い浮かべますが、ノ―コードの方が簡単で使いやすく、いいデザインが作れると思います。アイディアを形にするには、エンジニア+開発費用が結構かかるので一歩踏み出すハードルが高かったのですが、ノ―コードなら数万円くらいである程度のアプリを誰でも作ることが可能です。特に初期フェーズのスタートアップにはメリットが大きいと思います。

ひとつのセッションが新たなコネクションへとつながっていく

――Venture Caféと関わるようになったきっかけは?

もともとのきっかけは、知り合いに誘われてミーティングに参加したことです。その場にはVenture Café Tokyoのプログラム・ディレクターの小村 隆祐さんに加えて、現在CIC Japanの会長を務める梅澤高明さんもいらっしゃいました。英語のアクティビティをもっと増やしたいということでつながりができ、Thursday gatheringに足を運ぶようになりました。毎回行っているわけではありませんがVenture Café Tokyoが立ち上がった2018年から参加しています。当時入居していたコワーキングスペースとVenture Café Tokyoがコラボでピッチイベントを開催した時は自分もピッチを行いました。

――2020年12月には「ノーコード革命で起こるスタートアップ業界の変化」というセッションで登壇されました。

Thursday gatheringに行った時に、プログラム・ディレクターの小村さんと何かイベントをやろうという話になり、自分がいま取り組んでいるノーコードが面白そうということで、クリスマスイブにセッションを開催することになりました。

そのセッションをきっかけに新たな広がりもありました。小村さんが京都を活動拠点にしている三輪功祐さんを紹介してくれたんです。三輪さんは「京都にはたくさんの学生がいて文化が豊かな街だが、テクノロジーがちょっと遅れている。その問題を解決していこう」というイベントを企画しており、具体的な内容をどうするか小村さんに相談していたんです。小村さんは「ノ―コードなんかいいんじゃない?」ということで三輪さんと自分を引き合わせてくれました。

JTなどの協賛企業も付き、今年の6月に京都のお寺でハッカソン=Terackathon(テラッカソン)を開催しました。 これはアイディアを生み出すところから、ノーコードを使って自分で開発するまでをお寺で実践的に学べるイベントで、自分はそこでメンターを務めました。参加者は短い期間でもアイディアを形にできてすごいと思いました。大変だったけどとても楽しかったですね。これをきっかけに京都とのコネクションもできました。Venture Caféを起点にコネクションがどんどん広がっていると感じます。

――NAGOYA CONNÉCTでもセッションに登壇されていますよね。

自分の活動をいろいろサポートしてくれている人が名古屋在住なんです。小村さんたちとミーティングしている時に、今度彼を紹介したいという話から「じゃあ名古屋でもセッションをやりましょう」ということになりました。

NAGOYA CONNÉCTでは二つのセッションに登壇しました。「Inspiration / Innovation Nagoya with Nick Luscombe」というセッションでは、日本で活躍する海外出身の方たちとパネルディスカッションを行い、「世界に飛び込むためのmad services」というセッションでは、12月にVenture Café TOKYOで行ったイベントと同様、ノ―コードを活用することでスタートアップのビジネスの構築の仕方がどう変わっていくかなどについて語りました。80人くらいの参加者がいて質問も結構出ており、好評だったようです。

さらに8月にはVenture Café TOKYOで「はじめてのNo Code体験ワークショップ」も開催しました。これは1時間で自分だけのアプリ開発を体験するという現地参加のみのワークショップ。20代の参加者もいれば40~50代の参加者もいました。ノ―コードの捉え方がそれぞれ異なっていて面白かったですね。

毎回、そこに行けばモチベーションや勇気をもらえる

――Venture Caféのどういうところに魅力を感じますか?

Venture Caféでは普段は接する機会のない人たちと知り合うことができ、数えきれないくらいのよい出会いがありました。そこで知り合った人たちと必ずしも取引するわけではないのですが、後日、いろんな人を紹介してもらえたり、何かやりましょうとオファーをもらったり、自分のネットワークがどんどん広がっていきます。スタートアップは小さいしたくさんあるので、いかに自社の認知を拡大するかが重要です。多くの人と話すチャンスがあるThursday gatheringは有効だと思います。しかも経営者やベンチャー関係者など、ちゃんとビジネスをしたい人が集まっているのも魅力ですね。 毎回、モチベーションや勇気をもらっています。

自分の経験からいうと、大学院で学ぶ留学生は研究室にこもったりしてすごく狭い世界で生きていることが多く、もっと新たなことをインプットすべき。Venture Caféでは英語のセッションもありますし、多彩なセッションが開催されておりインプットの場としてはすごくいいと思います。セッションでただ話を聞くだけでも脳が活性化されますし、そこで得た情報を自分なりに組み合わせて新たなアイディアとして誰かに話せば、それがまた広がっていく可能性もあります。毎週、そこに行けば必ずそういう話ができるというのはうれしいですよね。

――今後の目標や抱負を聞かせてください

今まで色々お世話になってきたのでその恩返しをしたいですね。そのために自分にできることをやっていきたいと思っています。ノ―コードのセッションを開催するのもその一環です。

また、日本に滞在している留学生が学業を終えた時に「就職か帰国」ではなく「起業」という選択肢を持てるようにしたいと考えています。学生は起業の仕方など全くわかりません。資金調達やプロダクトの作り方など知らないことばかりです。最初の一歩がすごく難しいのですが、自分は今まで多くの壁を乗り越えてきたので、自身の経験をロールモデルとして情報発信し、留学生の起業をサポートしたいと思っています。日本の人口は減少していますから、優秀な留学生がここで起業すれば日本の利益にもつながるのではないでしょうか。

LikePayとしては「日本発のグローバル企業」を目指したいと思っています。従来の日本はものづくりで世界的にも競争力がありましたが、IT の時代となった今はアメリカが世界をリードしています。日本企業が海外企業を買収したケースはあるものの、グローバルで使われているITサービスで日本発のものはほとんどありません。日本は“日本語の壁”に守られており、英語のサービスが入りにくいなどの環境があります。日本国内のマーケットだけを見ていてもそこそこ売り上げがたつので、新たなことにチャレンジしたがらない会社も多いと感じます。しかしこのままでは市場はシュリンクすると思います。

LikePayでは、従来型のやり方ではグローバル市場では勝負できないことを意識し、例えば私たちが独自に作成しているノーコードツールなどはグローバルで使われる前提で構築していますし、細かいことですが料金もドルで設定しています。日本市場だけでなくグローバル市場で通用するユニコーンを目指しています。

◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café

Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。

http://venturecafetokyo.org/