HAPPEN #14: Lea Bio 浜中さん・SUSTAINABLEME 後藤さん・レオファーマ 黒田さん

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左からLeaBio浜中さん、SUSTAINABLEME後藤さん、LEO SCIENCE & TECH HUB黒田さん

回を重ねるごとに規模を拡大し、今や日本最大級のピッチイベントにまで成長したVenture Café Tokyo主催の「Rocket Pitch Night」。2021年には年2回開催となり、4月に開催されたロケットピッチに登壇した2組のスタートアップが、コメンテーターを介してコラボ。新たなHappenが生まれたといいます。

今回はヘルスケア系スタートアップ「Lea Bio(レアバイオ)」代表取締役社長の浜中康晴さん、「SUSTAINABLEME(サステナブルミー)」代表取締役の後藤友美さん、そしてVenture Café Tokyoが開催する様々なセッションに登壇し、「Rocket Pitch Night」のコメンテーターとしても活躍する黒田垂歩さんにお話をうかがいました。

|Rocket Pitch Nightの登壇者同士がコラボ

――まずはそれぞれの自己紹介をお願いします。浜中さんの会社「Lea Bio」のホームページを見ると「デジタルの力で世界の子どもに質の高い医療を届ける」ことを標榜されていますが起業のきっかけなどを聞かせてください。

浜中 私は大学卒業後、理学療法士としてリハビリテーションの仕事をしていたのですが、その後ジョブチェンジして製薬メーカーやバイオベンチャーに勤務していました。バイオベンチャーで働いていた時にベトナムの研究者などと知り合う機会があり、ベトナムの医療格差を目の当たりにしたんです。

ベトナム戦争の影響で奇形児として生まれてきた子供たちが病院の前で物乞いをしている姿を見た時に衝撃を受け、「この子たちを救いたい」と心が奮い立ったのが起業のきっかけです。私と同じような思いを抱き、ベトナムの医療事情にも詳しい共同創業者の松村との出会いもあり、2019年8月に日本で「Lea Bio」を設立しました。2022年にはベトナム法人を作る予定です。

――後藤さんの会社「SUSTAINABLEME」は、産前産後の当事者とサポーターをつなぐオンラインサービス「rubans」を運営されていますが、どのような経緯でサービスを展開することになったのでしょう?

後藤 私は10年ほど前から周産期リハビリテーションの仕事に従事しており、お母さんや妊産婦さんたちの身体のケアをしていました。私自身も2013年に第一子を出産したのですが出産後3ヶ月で離婚を経験し、その後、産後うつになってしまったんです。その時、私を救ってくれたのは「人との関り」でした。

自分自身が産後うつの当事者であると同時に周産期現場にかかわる医療従事者でもあり、双方の状況や思いがわかります。お母さんたちが孤独になる原因は何だろうと考えた時、専門家などのサポーターとお母さんたちがうまく繋がっていないというところに社会課題を感じ、お母さんたちとサポーターをつなぐオンラインプラットフォームをまずは作りたいと思いました。2020年に京都で開催された「京のヘルスケアインキュベーションプログラム」に応募し最優秀賞に選ばれたことをきっかけに2021年1月15日に創業しました。

――お二人とも2021年4月に開催された「Rocket Pitch Night」に登壇され、そこで黒田さんがコメンテーターをなさっていたんですよね。

黒田 はい。私はデンマークに本社を置く皮膚疾患領域に特化した製薬企業・レオファーマに属しておりまして、「LEO Science & Tech Hub」というイノベーション創出部門のシニアディレクターをしています。イノベーションエコシステムの形成に関わる様々なアクセラレーションプログラムにも関わっており「Rocket Pitch Night」のコメンテーターもその活動の一つです。日ごろから数多くのスタートアップに接する機会があり、どうやったらその人たちに貢献できるか日々、自問自答しています。今回は素晴らしい二人の起業家を繋ぐことができてとてもうれしく思っています。

|互いのアイディアが触れ合うことで化学反応が起きた

――「Rocket Pitch Night」自体は1日限りのイベントですが、その後も3人が密に関わるようになったいきさつは?

浜中 「Rocket Pitch Night」に出場後、黒田さんにはアドバイザーになっていただき定期的にメンタリングをしていただいています。私も共同創業者の松村も経営に関しては素人なので、以前から第三者のアドバイスが必要だと感じていました。

後藤さんとのコラボに関しては、弊社が開発中のアプリをテストするにあたり黒田さんに相談したのがきっかけです。ベトナム人も日本人もお母さんたちが抱えている問題は共通するものがあるんです。まずは日本でテストをしたいと考え、どなたか協力してくれそうな方はいないかと黒田さんに相談したところ「いい人を知っている」とご紹介いただいたのが後藤さんです。まさにドンピシャのマッチングでした。

後藤 私の方は「Rocket Pitch Night」直後に黒田さんと少しお話しさせていただいて以降、しばらく間があったので、コラボの話をいただいた時は「私のことを覚えてくださっていたんだ」ということがまずはとてもうれしかったですね。また、浜中さんも私もリハビリの専門家というバックグラウンドであることにも運命を感じました。

――具体的にはどのようなコラボレーションが進んでいるのでしょう?

LeaBioとSUSTAINABLEMEが連携するアプリケーション「MEQUY(ミクイ)」のモニター募集の案内

浜中 ベトナムの周産期のお母さんたちや医療関係者は日本式の医療情報をとても欲しがっています。後藤さんが運営する「rubans」が持つ情報資源を、弊社の開発するアプリでベトナムの人たちに届けようとしています。スケジュールや細かい部分は現在詰めているところですが、2022年の1月にベータ版をリリース予定で、2022年の春頃に本格的なローンチを目指しています。

進捗状況は双方のホームページやFacebook、Twitterなどで発信していくのでぜひフォローしてください。

後藤 私のミッションは「妊産婦さんを救いたい、助けたい」ということ。日本だけでなく海外でも妊産婦さんたちが同じ悩みや課題を抱えているなら、ぜひとも協力したいと思いました。

また「rubans」では看護師さん、助産師さん、ヨガインストラクター、アロマセラピストなど多種多様な方にサポーター登録をしていただいています。日本では一般的に行われているような妊産婦向けのプログラムや教育などが、ベトナムではまだ少ないと聞いているので、今回のコラボによって「rubans」でサポーター登録している方たちの活躍の場も増やせるのではないかと期待しています。

黒田 強い決意を持った起業家のお二人だからこそ、私は応援しています。お二人を引き合わせた瞬間から「こんなことでもできるよね」「あんなこともやりたい」など互いの発想が大きく膨らんでいます。それぞれが持っていたアイディアが触れ合うことで化学反応が起き、花火がバンバン打ちあがっているような状態です(笑)。今後が本当に楽しみです。

浜中 後藤さんと出会わなければ“日本式の医療情報”を届けようというアイデアは思い浮かばなかったでしょうし、思いついても提供は難しかったはず。ベトナムなどの途上国は日本人が想像する以上に医療従事者の知識が不足していたりするので、我々がサービスを提供することで、いろんな意味で医療の質をアップできるのではないかと今からワクワクしています。

後藤 私も浜中さんも、元々がリハビリテーション畑ということもあり、根本的な考え方などすごく共感できる部分が多いんです。だからこそいろんなアイディアが浮かぶのではないかと思っています。浜中さんや黒田さんの言葉から自分一人では気づくことができなかった新たな発想が生まれるので、3人でのミーティングの時間というのは学びの時間でもあります。

ただ、私も浜中さんも「これを解決したい」という思いは強くても、それをどうビジネスに結びつけるかがちょっと弱いので、その点は反省すべきなのかもしれませんが(笑)。

|いい起業家というのは周りの人を巻き込むのが上手い

――「Rocket Pitch Night」には数多くのスタートアップが登壇しますが、コメンテーターやオーディエンスの心をつかむピッチはどのあたりが違うのでしょう?

黒田 浜中さんも後藤さんもすごく印象に残りました。技術云々とかではなく、エモーショナルにグッとくるところがあったんです。浜中さんの場合は、ベトナムの小児医療をどうにかしたいという強い思いが全面にはっきりと出ていましたし、後藤さんに関しても周産期のママに対するケアが足りていないという想いがひしひしと伝わってくる、そんなピッチでした。

特徴として、二人とも自身の体験に基づいた強い気持ちからくる起業だというところがあります。これがただの儲かるビジネスだったら僕はそこまで応援しないで「頑張ってね」で終わったかもしれません。でも二人の取り組みは社会的にも意義があり、必要性の高いもの。僕自身も医療に関わるひとりとして、ぜひとも応援したいという気持ちが強かったですね。

――エモーションをうまく伝えられるスタートアップの特徴はありますか?

黒田 まずは本当に強烈な、自分を突き動かす気持ちとか原体験があるかどうかということ、そしてそれをきちんと表現できているかということが重要だと思います。

さらにもう一つ付け加えると、ピッチが終わった後、お二人とも「ちょっとお話しさせてください」と、僕のところにすぐにコンタクトしてきたんです。

いい起業家というのは巻き込み上手ですね。周りの人の協力を得ていかを巻き込むのがうまくないと、なかなか思っていることを実現できませんから。今回のお二人は本当に巻き込み上手。そこはやはりいい起業家の特徴だと思います。

――浜中さんと後藤さんは「Rocket Pitch Night」に登壇された立場から、参加する際の心構えやアドバイスはありますか?

後藤 真剣勝負で臨むということが重要だと思います。私のピッチを聞いてくださる方たちに失礼のない発表をしたいと考え、3分& 3スライドという制限の中、いかに自分の思いを伝えるかを一言一句、時間をかけて資料を作成しました。「Rocket Pitch Night」は自分一人では得られない気付きや成長の機会を与えてくれる貴重な場。それだけに中途半端な気持ちで参加してはもったいないです。

浜中 後藤さんの意見に同意します。喋るのが下手だとか、他人に思いを伝えるのが苦手だという人もいますが、真剣に話せば少なくとも数いる聴衆の一人くらいには伝わるはずなので、本気で参加することが大切だと思います。また、せっかく出場したなら自分の認知度を高めるためにも、名刺交換をするなど、どんどん輪を広げていくことも重要でしょう。

黒田 今回のお二人の例を見ても、「Rocket Pitch Night」は何か新しいものを生み出す場になり得るんだということを実感し、うれしく思っていますました。

基本的にあの場はそこに集まっている人のは全て応援者なわけになりうるんですよね。だし、僕のようなコメンテーターを介したり、ピッチした人同士が繋がったりして、て何か新しいことが生まれるというケースは、これからもどんどん出てくるのではない必ずあるでしょうか。自分の仲間を増やしてビジネスを新しく展開させていく。それによって自身の強い「想い」を実現させていく。、「Rocket Pitch Night」がそういう機会を提供する創造できる場になっていくとして使ってもらえることを期待していますといいなと思います。

◆「Rocket Pitch Night」とは

過去4回(2019, 2020, 2021春・秋)開催のVenture Café Tokyoのシグネチャーイベント。2021年秋のイベントでは120組以上のスタートアップがピッチを行い1000名以上の参加者を集めました。

登壇者に対しては3分 & 3スライドというピッチフォーマットをもとに、ビジネスアイデアを世に問い、周囲を巻き込む、あるいはシンプルに起業に向けた最初の一歩を踏み出す機会を提供します。

当日は、経験豊富なコメンテーター陣やオーディエンスからのフィードバックコメントを得られる機会を用意します。

また、同時に当日来場いただいたオーディエンスのみなさんには世の中を変えうる新たなアイディアや才能と出会う機会を提供します。

◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café

Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。

http://venturecafetokyo.org/

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