HAPPEN #17: Miyo Yamamotoさん(MiYO Organic)

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数多くの起業家とオーディエンスが集結するVenture Café TokyoのシグネチャーイベントRocket Pitch Night。今回ご紹介するMiYO Organic 代表の山本美代さんは、2021年11月に開催されたRocket Pitch Nightに参加したことをきっかけにビジネスが大きく前進したと言います。どのようなHappenがあったのでしょうか。

|食器のスタイリストが竹歯ブラシを開発

――店舗プロデュースを行うDINING+、食器ソムリエ協会の代表理事、環境に配慮した日本発のサスティナブルブランドMiYO Organicなど幅広くご活躍なさっています。

DINING+は母が経営する会社の一部として立ち上げた事業で、ホテルや結婚式場、レストランなどの商業施設向けに食器や備品の販売・スタイリングを行っています。食器に関わる仕事をする中で、食器に関する情報が上手く循環していないのではないかという思いがありました。食器業界全体をよくするハコの必要性を感じ、設立したのが一般社団法人 食器ソムリエ協会です。MiYO Organicは世界中で大量に廃棄されるホテルのアメニティをもっと環境に優しい物に変えられないかということからスタートし、竹歯ブラシなど環境に配慮した商品の開発・販売を手掛けています。

――MiYO Organicは出張先のホテルで、アメニティの歯ブラシで歯を磨いている時の気づきから始まったそうですね。

今まで当たり前と思っていたことを急に疑問に感じることって、珍しくないと思うんですが、出張先のホテルで歯を磨きながら「私はこの歯ブラシを夜と朝、たった2回だけ使って捨てるんだ」ということに改めて気づき、すごくもったいないことだと思ったんです。世界中で大量の歯ブラシがゴミとなっているビジュアルが頭に浮かんできて「ああもうこれはやるしかない」と。もともと私はちょっとオタク気質で、思い込みと情熱だけでやっている部分はあります(笑)。

――ブランド設立のきっかけから、「竹」で歯ブラシを作ることに決めたこと、歯ブラシ工場ではなく割り箸を作る工場での生産、原料として中国産の竹を使うなど、製品化までの詳しい道のりはご自身のNoteで紹介されていますが、どのあたりが一番大変でしたか?

やはり製造工場を探すのは大変でしたね。歯ブラシ工場で生産を断られ、暗礁に乗り上げてしまったような時期もありました。また、クオリティと価格、見た目の可愛さなどのバランスにも苦労しました。品質が良くても歯ブラシ1本に1500円はかけられませんから。

|ピッチは事業を改めて客観視する機会になった

――MiYO Organic として「Rocket Pitch Night Autumn 2021」に参加されたわけですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

以前からVenture Café TokyoのThursday gatheringには時々、参加していました。そこで竹歯ブラシの話をしていたら、Venture Café Tokyoプログラム・ディレクターの小村隆祐さんにRocket Pitch Nightについてご紹介いただいたんです。以前、食器関連の事業の方で、他のピッチイベントに出場したことはあるのですが、しばらくピッチはしていなかったので「久しぶりにちょっとやってみようかな」という軽い気持ちで応募を決めました。

出場が決まって実際に準備を始めるとその大変さに気づきました。決められた時間内に短い言葉で自分たちのことをきちんと伝え、よさをわかってもらうのはとても難しいことだと改めて感じました。それは決して悪いことではなく、自分たちが行っている事業を俯瞰してまとめるすごくいい機会になったと思います。

――具体的にはどのような準備をされたのでしょう?

Venture Café TokyoのYouTubeチャンネルに前回のRocket Pitch Nightの出場者が自分たちの体験を解説しているビデオがアップされていてそれを参考にしました。最初はどうやって作っていこうか迷うものですが、注意すべきポイントやコツなどを実際に出場した人が丁寧に伝えてくださっていて、それを何度も見て作りこんでいきました。こういうものを事前に見ているかいないかでは結構差がつくかもしれません。

――実際に出場してみて、いかがでしたか?

実は私、失敗してしまったんです。スライドが上手く動作しなかったり、時間が少しオーバーしてしまったり。でもコメンテーターの方たちから暖かいアドバイスなどをいただき、ありがたかったです。また私はオンラインではなく現地参加をしたのですが、スタートアップの人たちはもちろん、支援する人、自治体の方など、とにかくいろんな人たちが集まっていて、短時間でいろんなご縁が生まれて、そういう化学反応がすごいと感じました。

|Rocket Pitch Nightで得たご縁が化学反応を起こした

――Rocket Pitch Nightに出場したことがきっかけでスギ薬局さんと提携が決まったと聞いています

私が出場したグループのコメンテーターに藤田豪さん(株式会社MTG Ventures 代表取締役)がいらしたんです。私のピッチに対して「例えばスギ薬局さんに商品を展開してはどうか」というようなコメントをいただきました。ピッチの後、 ネットワーキングの場でも藤田さんとお話しし、スギ薬局さんとの提携に興味があると言ったら「じゃあ紹介するよ」と、本当に紹介していただけたんです。後日、私の方からスギ薬局さんに直接コンタクトを取り「打ち合わせをしましょう」という話になったので、台湾からのオンライン参加も含めて6名でミーティングさせていただくことに!

――Rocket Pitch Nightに出場したのが2021年11月11日。スギ薬局さんでMiYO Organicさんの竹歯ブラシの販売がスタートしたのが2022年5月。かなり順調に話が進んだようですね。

すごくタイミングがよかったといえます。ちょうどスギ薬局さんの方もサステナビリティに重きを置き、そういう商品を増やしていこうという時期で、かなりのスピード感を持って取り組んでいらっしゃいました。当社もそれについて行こうと必死でした。

ただ、最初に藤田さんのご紹介があったことは大きいと思います。私が何の紹介もなくいきなりスギ薬局さんに電話をしても、こんなに順調に話は進まなかったでしょう。私たちだけでは短期間にここまではできなかったはず。藤田さんからいただいたご縁が化学反応を起こしたのだと思っています。

――スギ薬局さんとの提携で苦労した点などがあれば教えてください

今まで私たちが展開していたビジネスはB to Bで、今回初めて本格的に一般消費者向けの市場に踏み込むことになりました。ですので、ゼロから勉強させたもらった部分はかなりあります。例えば、「ドラッグストアでの陳列」に関する知識もノウハウもないわけです。そういう何も知らないところから商品の陳列や展示などに使う什器を作ってくれるところを探すなど、文字どおり一から始めました。基本的には什器はこちらで用意しなければならないのですが、今回はスギ薬局さんの方でディスプレイをご用意いただくこともありました。

納品時のルールなど、今まで携わってきた業界とは異なる慣習があり、新しい業界には新しい業界のルールがあることを実感しました。かなり色んなことを学ばせてもらいましたね。スギ薬局さんには助言をいただきながら育てていただいた感じで、本当に感謝しています。

――今後はどのような事業計画をお持ちですか?

MiYO Organicでは竹を中心にプロダクトを構成していましたが、竹に限定せず、いろんな新しい技術を使って一般消費者向けのラインナップを増やしていきたいと思っています。その一つが22年4月から予約販売を開始した「歯磨きペーパー」です。歯磨き粉をペーパー状にすることで、パッケージにも紙を使用することに成功しました。このほかにも脱プラスチックの歯ブラシキャップも開発中です。

さらに、プロダクトだけではなく生産の仕組みのところから循環社会を目指していきたいと考えています。私たち一社でできることは限られているので、自治体さんや他の事業者さんと連携しながら、長期的視点に立った循環の輪を作ることにチャレンジしたいと思っています。

また、グローバル市場にも参入したいと考えています。

|予想しないご縁があり、次につながる何かがある

――Venture Café Tokyoのどういうところに魅力を感じますか?

“世界を感じられる”ところでしょうか。私自身、外国人の友人が多いこともありVenture Café Tokyoの空気感はとても心地がいいんです。日本国内でビジネスをしていると視野が狭まくなることがありますが、Venture Café Tokyoに行くとセッションの登壇者も参加者もインターナショナルに活躍されている人が多く、グローバルな視野を持つことができます。いろんな方面で活躍している人がいっらっしゃるので刺激もたくさんもらえます。私が知らないだけかもしれませんが、日本でスタートアップ系の集まりでVenture Café Tokyoのようにインターナショナルなコミュニティは他にはないんじゃないでしょうか。

――Rocket Pitch Nightに参加しようと思っている人にアドバイスはありますか?

迷っているなら絶対に出た方がいいと思います!

自分が予想していないようなご縁があります。私の場合もRocket Pitch Nightに出場することで普段はなかなか接する機会のないコメンテーターの方とお会いし、お話しするチャンスがあり、それが今の結果につながっています。出場する前は想像できなかった展開がありました。

また、ピッチ以外のネットワーキングのパートもあわせてRocket Pitch Nightだと考えた方がいいですね。自分のピッチが終わったら帰るのではもったいない。Rocket Pitch Nightは様々な人が集い、熱量がある場。セレンディピティというか、次につながる何かを見つけられる場所だと思います。

◆「Rocket Pitch Night」とは

過去5回(2019, 2020, 2021春・秋, 2022)開催のVenture Café Tokyoのシグネチャーイベント。2022年春のイベントでは108組の登壇者に加え、Venture Caféグローバル史上最大動員となる1,020名の参加者を集めました。

登壇者に対しては3分 & 3スライドというピッチフォーマットをもとに、ビジネスアイデアを世に問い、周囲を巻き込む、あるいはシンプルに起業に向けた最初の一歩を踏み出す機会を提供します。

当日は、経験豊富なコメンテーター陣やオーディエンスからのフィードバックコメントを得られる機会を用意します。

また、同時に当日来場いただいたオーディエンスのみなさんには世の中を変えうる新たなアイディアや才能と出会う機会を提供します。

◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café

Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。

http://venturecafetokyo.org/

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