HAPPEN #18: 丹治 大佑さん(NAGOYA CONNÉCT)

--

今回のHAPPENストーリーでご紹介するのは、NAGOYA CONNÉCTのアンバサダーであり、日本とインドを繋ぐ活動や、子供向けの起業家教育など精力的な活動を行っている丹治大佑さん。今年の6月には20年間の会社員生活にピリオドを打ち独立することに。新たな一歩を踏み出すきっかけとなったのはNAGOYA CONNÉCTと関わったことだといいます。

|赴任先のインドに魅せられ日本とインドの橋渡し役に

――まずは自己紹介をお願いします。

出身は福島県で大学は東京でした。海外に関わる仕事をしたいという思いから商社に入社しました。 2013年から2018年までの5年間、インドに駐在し、2018年にインドから帰国して名古屋に赴任、現在も名古屋に住んでいます。商社に勤めながら、日本とインドを繋ぐための情報発信を行ったり、2019年から2年間、社会人大学の「事業構想大学院大学」で子供向けの起業家教育を研究し、2021年に事業構想修士(Master of Project Design=MPD)を取得しました。

会社員生活は20年に渡りましたが、自分自身でビジネスを立ち上げることを決意し、2022年の6月に会社を辞めて独立。現在は愛知県が支援するスタートアップ支援施設「PRE-STATION Ai(プレ・ステーションエーアイ)」を拠点に、事業を軌道にのせるべく奮闘しています。事業内容としては、一つは日本人にインドの魅力を伝え、日本とインドの連携ビジネスを推進すること。インド特化型の研修やセミナーなどを行っています。もう一つは子供向けの起業家教育の促進です。今年度にスタートした愛知県小中高生向け起業家教育事業「Aichi Startup School」では、地域コーディネーターや講師を務めています。この二つの事業を主軸に展開していく予定です。

――5年間の駐在生活ですっかりインドに魅了されたそうですが、どうところに惹かれたのでしょうか?

日本にいた時は「自分は周りからどう思われているか」ということを常に気にしながら生活しているようなところがあり、モヤモヤした感情を抱えていました。でもインドは人口が13億もあり、宗教も言語も入り乱れていてまさにカオス。インドの人たちは他人の目など気にせず、ありのままの自分を受け入れ、自分のやりたいように暮らしています。そんな彼らを目の当たりにし、「常に周囲の目を気にしていた自分はなんて小さな人間だろう。自分のやりたいように自由にやればいいんだ」と、すごく解放された気分になりました。そうしたら毎日がすごく楽しくなったんです。インドに救われたといえるかもしれません。

――インドに関する情報発信を積極的に行っているそうですね。

インドはインフラや社会の仕組みなどうまく機能していないことも多く、課題が山積みの国です。それだけにビジネスの機会は無限に広がっているともいえます。インドと日本の企業が融合したらすごいパワーを発揮できると思うのですが、インドは治安がよくないとか、衛生面で問題があるなどネガティブな情報ばかりが横行しており、日本にちゃんと情報が伝わっていません。インドのもっとポジティブな面やポテンシャルの高さを誰かが発信しなければいけない――これは僕がやるしかない、自分に与えられた使命なのだと感じています。民間企業、自治体、大学、大使館などの垣根を越え、その「横串」の役を率先して担うことで、一歩ずつですがインドを知ってもらうきっかけづくりに励んでいます。

|NAGOYA CONNÉCTはどんどん失敗してもOKな場所

――NAGOYA CONNÉCTのアンバサダーをなさっていますが、どのような経緯で関わることになったのでしょう?

NAGOYA CONNÉCTに参加することになったのは「事業構想大学院大学」に通い始めたのと同じくらいの時期です。名古屋に赴任してまだ1年くらいで“インドロス”も大きかったし、土地勘のない場所で交友関係も広がらず、また少しモヤモヤを感じていました。そんな時期に、もともと知り合いだったNAGOYA CONNÉCT Program Managerの粟生万琴さんに声をかけてもらったのがきっかけです。

「NAGOYA CONNÉCTには面白い人がたくさん来るし、アンバサダーとして運営を手伝ってくれれば、いろんな人に出会えますよ」と誘われたんです。

実際にアンバサダーをしてみたら本当にそうでしたね。名古屋は地元ではありませんし、会社関係以外の友人・知人を作るのに苦労していたのですが、NAGOYA CONNÉCTのアンバサダーという立場があれば、相手の信用も得やすいですし、コミュニティに入り込むきっかけになります。スタートアップ界隈の人たちのほか、名古屋市が運営しているので自治体の人たちもたくさん来ます。この人に繋がればこの人にも繋がる、というようにどんどん人脈が広がっていきました。

――現在はアンバサダーだけでなくプログラムリード(グローバル)という役割も担っているそうですね。

アンバサダーとして参加してしばらく経ったころ、NAGOYA CONNÉCTのプログラムにも携わらないかと話がありました。やります!と答えたものの、初めてのことなので、セッションの内容や時間配分など「これでいいんだろうか」とかなりガチガチになっていました。そんな時、粟生さんが

「NAGOYA CONNÉCTは失敗の練習ができる場所だから、完璧を目指す必要は全然ない。自分で考えて、好きなようにどんどんやればいい。それこそがアントレプレナーシップ」

と言ってくれました。自分のやりたいようにやってみて、うまくいかなかったところを直していけばいいのだと。そう言われて肩の荷が下りました。

日本は失敗に厳しい文化ですし、思う存分失敗していいなんて会社員時代はありえなかったことです。粟生さんは僕だけでなく、アンバサダーとして参加している学生たちにも同じことを言っています。学生たちは実際に時々やらかしますけど(笑)、その失敗を反省して次に生かしています。こういうところはNAGOYA CONNÉCTの本当に素晴らしいところだと思います。

――実際に自分でセッションを手がけていかがでしたか?

2021年11月のNAGOYA CONNÉCTで、社会人大学で学ぶということをテーマにしたセッションを手がけました。事業構想大学院大学で一緒に学んだ人たちを呼んで、どういう思いで社会人大学に通っているのかを語ってもらったり、ビジネスプランをピッチしてもらいました。僕自身はモデレーターをしたのですがとても楽しかったですね。自分でプログラムを考え、実際にセッションを開催し、そこに来た多くの人たちが共感してくれたことに喜びを感じました。プログラム作りは自分に向いていると思いましたし、意外とうまくできるじゃないかという気づきがありました。

自分の潜在的な能力に気づくことができたのはトライできる場があり、行動したから。Venture Café Tokyo代表理事の山川恭弘先生がよく「Action Trumps Everything!(行動はすべてに勝る=まず行動しよう!)とおっしゃっていますが、アクションを起こすことの大切さを身をもって感じました。この「Action Trumps Everything」というのは大好きなフレーズで、自分のFacebookの自己紹介にも掲げています。

ありがたいことにセッションの評価もよく、22年からはアンバサダーとしてだけでなく、プログラムリードとしての役割も担うことになりました。8月には「小学生からはじめるアントレプレナーシップ教育」というテーマでプログラムリード兼モデレーターを務め、東京・虎ノ門ヒルズでVenture Café Tokyoの「インドのスタートアップエコシステムの可能性」をテーマにしたセッションでも登壇しました。何度かやっていくうちに楽しさが自信に変わってきたとも感じています。

|NAGOYA CONNÉCTが一歩を踏み出す背中を押してくれた

――会社員生活にピリオドを打ち独立に踏み切ったのはNAGOYA CONNÉCTに参加したことが1つのきっかけと聞いています。

NAGOYA CONNÉCTに参加していなかったら、この一歩は踏み出せなかったと思います。まずは人との繋がりをこんなに増やせなかったでしょう。NAGOYA CONNÉCTがきっかけで知り合った方に「名古屋は保守的な街。だからこそ丹治さんのように外から来て革新的な考えを持っている人が必要で、すごく貴重な存在なんです」と言っていただいたことがあります。自分は“ただのよそ者”ではなく地域の人に必要とされる存在なんだと知ることができ、すごくうれしかったです。

子供向けの起業家教育のセッションを行った時は、衆議院議員の方や、名古屋市の副市長、経済局長などそうそうたるメンバーが来場され「やはりこれからは子供たちにもこういう教育が必要だ」というお言葉をいただきました。普段はなかなか接する機会のない方たちにも自分が手がけたセッションに参加してもらうことができ、さらには共感してもらえたのは、NAGOYA CONNÉCTという場があったからこそ。

このような手ごたえを実感できる場がなかったら独立、起業するという道は選べなかったかもしれません。

――今後の抱負はありますか?

日本とインドの融合を促進し、笑顔の数を増やすことを目指しています。融合というのは経済的な部分だけではなくマインド的な部分も含めてです。日本とインド、それぞれが不足しているものを補完しあえれば新たなイノベーション、新たな価値が生まれると確信しています。そのための仕組みを多角的に構築したいと考えています。文化的な交流、ダンス、ヨガやアーユルヴェーダ、インド映画、インド料理などライフスタイルの中にちょっとでもインドが関わることで人生のスパイスになれば、と思っています。

日本がインドを知らないようにインドも日本をよく知りません。日本企業のインド進出のサポートだけでなく、インド人が日本に来てどんどん働けるような仕組みも整えなければいけないと思っています。そうすればインド人も日本の魅力をインドにどんどん発信するようになり、インドからのインバウンド客も増えるでしょう。「中国人観光客の爆買い」のような現象がインド人バージョンで起これば経済波及効果も大きく、日本ももっと元気になるはずです。

実は今年は日本とインドは国交樹立70周年なんです。日印関係において非常にメモリアルな年でもありますし、自分が独立するなら今がベストタイミングだとも感じました。将来的には愛知県にインドタウンを作れたらいいなと思っています。

◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café

Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。

http://venturecafetokyo.org/

NAGOYA CONNÉCTは毎月第2・第4金曜日に名古屋市主催で開催されるVenture Café Tokyoのプログラムです。多様なイノベーター達による講演やイノベーションを加速させるワークショップ等を通じて参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験を梃子にネットワークを拡げることが出来ます。

--

--