HAPPEN #22: angle伊藤さん、ヤマハ柘植さん/ 安間さん/ 山本さん

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Venture Café TokyoのシグネチャーイベントRocket Pitch Night。今回のHappenでは、ピッチ登壇者としてイベントに参加したことをきっかけにビジネス提携が決まった例をご紹介します。
お話をうかがうのは、挑戦者とメンターのマッチングサイト「MentorMe(メンターミー)」を運営するangleのCEO伊藤啓二さん、楽器やAV機器などの製造販売だけでなくイノベーティブな企業としても知られるヤマハで新規事業に取り組む柘植秀幸さん、そしてヤマハの社内公募制度「ValueAmplifier(バリューアンプリファイヤー)」の企画・運営チームの安間尚美さんと山本雄登さんです。

|始まりはピッチの待ち時間の雑談

――伊藤さんと柘植さんは2022年5月26日に開催されたRocket Pitch Nightに出場されたそうですが、自己紹介も兼ねてそのあたりの経緯などもお話しいただければと思います。

伊藤 社会課題をビジネスで解決していくことをコンセプトとするangleという会社を経営しています。Rocket Pitch Nightではその第1号として取り組んでいるMentorMeとしてエントリーしました。これは何かに挑戦しようという時に、メンターや仲間を簡単に見つけることができるサービスで、現在、1500名以上の各分野のプロフェッショナルがメンターとして登録しています。

CICに入居していることもあり、Rocket Pitch Nightの情報を聞いたその日に即、応募しました。MentorMeはみんながメンターであり、メンティであるという世界観なのですが、起業家やチャレンジャーが一堂に会するRocket Pitch Nightはコミュニティを拡大するのにすごくいい場だと思いました。僕自身、今まで何度か新規事業を立ち上げており、仲間づくりやパートナーと出会うにもピッチイベントに出ることは効果的だという経験則もありました。

柘植 ヤマハではデザイナーとしてプロダクトデザインに携わっています。Rocket Pitch Nightには、社内公募制度のValueAmplifierの枠組みで開発中のシステムReal Sound Viewing(リアルサウンドビューイング)でエントリーしました。これはライブを「真空パック」するというコンセプトをもとにヤマハ独自の様々な技術を組み合わせることで、日時や場所の制約に関係なく誰もが楽しめるライブ体験を生み出すものです。

Rocket Pitch Nightに出場したきっかけは、ValueAmplifierという制度の中で活動していたものの、そこから先どう事業化していくかなど、新しい道を開拓する必要性を感じていたことが背景にあります。資金調達や事業化のステップなど、スタートアップが参考になりそうだといろいろ調べていたんです。その過程でピッチイベントというものがあることを知り、日本ではどういうピッチイベントが開催されているのかをリサーチし、たどり着いたのがRocket Pitch Nightでした。今までは社内のみの活動だったので社外の方からどう評価されるかも興味がありました。

――Rocket Pitch Nightではどのような接点があったのでしょうか?

伊藤 現地には登壇者の待合スペースみたいなものが設けられており、そこに居合わせた柘植さんとお話しさせていただいたのが始まりです。まず「ライブの真空パック」という言葉がすごくカッコよくて刺さりましたね(笑)。ちょうど2か月後に矢沢永吉さんのライブに行く予定だったので「ぜひ矢沢さんのライブも真空パックしてほしい」というような軽いノリでお話ししました。

柘植 そうでしたね。私はMentorMeさんのピッチを見た時に、ValueAmplifierと相性がよさそうだとなんとなく感じたのですが、詳しくお話を聞くとさらにその思いを強くしました。自分自身、新規事業に取り組む中で試行錯誤することが多々あるのですが、社内だけではどうしても相談できる相手が限られてしまうんです。MentorMeさんのサービスを利用すればいろんな方からアドバイスが受けられるというのはすごく魅力的だと思いました。そこで早速、ValueAmplifierのチームにつなぎました。

伊藤 それがご縁でMentorMeがValueAmplifierに連携させていただくことになりました。

|社内公募制度に社外の視点を取り入れる

――先ほどからたびたび話題に上るValueAmplifierについて、どういう制度なのか安間さんと山本さんから説明いただけますか?

安間 ヤマハでValueAmplifierのチームの責任者をしている安間です。ValueAmplifierはボトムアップの新規事業を支援する社内公募制度で2015年4月にスタートしました。ValueAmplifierという言葉には、「価値を増幅する」というような意味があります。挑戦するマインドを持った人材の育成や企業風土の醸成を目的としており、ヤマハから新しい価値が次々と湧き出すようにしたいという思いで日々、取り組んでいます。

山本 安間と同じ部署で企画運営を担当している山本です。ValueAmplifierは社員の実現したい世界を事業として育てて世に送り出すような仕組みで、アイディアの募集から弊社の事業としてリリースするまでをサポートしています。最近、事業化したケースとしては、ゲーム配信用のオーディオミキサー「ZG01」、2023年1月にリリースしたBGM作成アプリの「AmBeat」などがあります。ゴルフのスイング撮影・比較補助アプリ「PLAY SWING」はジャパンゴルフフェア2023でベータ版を公開し、正式版リリースに向けて詰めているところです。ここ3年くらいだと1年で平均30件くらいの応募があり、次回の募集が秋に控えているところです。

――柘植さんと伊藤さんの出会いから、とんとん拍子でValueAmplifierとMentorMeの連携が決まったと聞いていますが、何か理由はあったのでしょうか?

伊藤 Rocket Pitch Nightで柘植さんと出会ったのが昨年の5月の後半で、6月にはValueAmplifierのチームとお会いしました。夏くらいからお付き合いがはじまり、正式な契約は今年の2月になります。非常にスピード感がある連携をさせていただきました。大手企業さんは社外との連携に時間がかかることが少なくありませんが、すごく動きが早くて驚きました。ヤマハさんは、楽器製造の過程で生まれた技術などを活用し、さまざまな事業展開を行ってきた歴史があると聞いているのですが、そのチャレンジャー精神が組織に根付いていると感じました。

安間 伊藤さんと出会った直後に柘植が私の方に連絡をくれたんです。そこですぐに伊藤さんとミーティングする機会を作りました。ちょうど新たなValueAmplifierのプログラムが始まる時期でもあったのでタイミングもよかったと思います。

山本 ValueAmplifierでは社外の意見を取り入れる機会が少ないというのが一つの課題でした。応募アイディアの中にはヤマハが直接関わっていない事業のものもあるので、社内の選考員だけでは判断に迷うこともあります。そのような課題を解決するために社外の人の意見をもらえる場や体制を作るべきではないかと思っていたところに、伊藤さんとのつながりができました。こちらの要望に対してすごく柔軟に対応していただけたことも、とんとん拍子で連携が進んだ理由の一つだと思います。

|アクセシビリティとダイバーシティに大きな魅力

――Rocket Pitch NightやVenture Café Tokyoのどういうところに魅力を感じますか?

伊藤 Rocket Pitch Nighのように、これだけ多くの人が集まり、気軽に話したりつながったりできるのに応募の敷居が低いイベントはそうはないと思います。ピッチイベント自体はたくさんありますが、長期のプログラムの一部だったり、応募書類をそろえるのが大変だったり、ハードルが高いものが少なくありません。Rocket Pitch Nightは失うものはなく得るものは多いイベントだと思うので、もし出場しようかどうか迷っている人がいたらぜひ応募することをお勧めします。

Venture Café全般については、アクセシビリティとダイバーシティに強みがあると思います。毎週木曜日、そこに行けばイベントが開催されているので、当日、決めても参加しやすくアクセシビリティがすごくいいですよね。さらに、東京だけでなく、つくば、名古屋など全国にどんどん広がっているのも魅力だと思います。ダイバーシティに関しては学生さんから企業に勤務されている方、起業家、公的機関の方など非常に多様な方たちが集い、フラットに話ができる環境が形成されているところに大きな魅力を感じます。

柘植 弊社のような事業会社の人間こそもっと参加した方がよいと思っています。私は勤務地が浜松なのでVenture Café Tokyoに頻繁には行けないのですが、逆に東京にいたら結構な頻度で通っていたと思います。Rocket Pitch Nightの出場者は、課題も事業内容も実に多様です。普段の仕事の中ではなかなか接する機会がないので、その視座を垣間見るだけでも参加する意義はすごくあると思います。

山本 私も普段は浜松にいるのですが、柘植がRocket Pitch Night で副賞としてCIC Tokyoの利用権を獲得したこともあり、現地に見学に行きました。その時に感じたのは、集まっている人たちの多様性と思考の柔軟性です。企業に勤務している人間とはまた違った考え方をする方が多いので、特に用事がなくても、とりあえず行って話してみるだけでも得られるものがたくさんありそうだと思いました。

安間 その空間にいるだけで刺激を受けることができるというのは大きな魅力ですし、新規事業をリリースする前段階で、外部の方の意見を取り入れ、検証する場にもなりえると思います。浜松だけでは情報量も限られるのでVenture Caféのような場を、企業としてももっと活用できたらいいですよね。弊社だけでなく、社内で新規事業をサポートしていらっしゃる部署の方は同じようなことを考えていらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、権利関係などは細心の注意を払う必要がありますが、そのあたりのバランスがうまく取れれば、日本からもっとイノベーションが生まれやすくなるかもしれません。

――今後の目標としていらっしゃることはありますか?

伊藤 会社として目指すところは2つあり、一つはハブとしてのコミュニティの強化です。現在、MentorMeではメンターの提供がメインですが、企業や投資家などとのつながりもありますし、世界を目指すスタートアップの支援もしているので、コミュニティの幅をもっと広げたいと考えています。もう一つは「挑戦データベース」のようなものを作ることです。世界には同じような課題でつまずいている人が数えきれないほどいます。先人が挑戦して失敗した事例は世の中にたくさん眠っているはずなので、それをデータベース化していけば次に挑戦する人の教訓として生かせるはず。そういうものを構築できたらいいなと思っています。

安間 すべての社員が提案者になるというのは難しいと思いますが、提案者にならなくても、サポートしたり応援したり、そっと見守るなど新規事業への関わり方はいろいろあります。企業として行っているプログラムだからこそより多くの社員を巻き込みながら、新しい価値が次々と湧き出してくるようなヤマハになることを期待し、それを目指して頑張っていきたいと思っています。

山本 今後もValueAmplifierからどんどん面白いアイディアや事業が出てくるように環境の整備に努め、起業マインドのある学生が就職先を決める時の有力候補としてヤマハが挙がってくるような未来を思い描いています。「ヤマハなら新しいことができる。企業での経験を積むと同時に、自分のアイディアを形にできる」と選んでくれるようにしたいと思っています。

柘植 実は今年の4月からValueAmplifierという枠組みからは卒業という形になり、新規事業の開発部門が立ち上ったのでそこでReal Sound Viewingの事業化を進めています。まずはこの事業化を成功させるというのが最大かつ一番の目標です。そのうえで、Real Sound Viewingがコンセプトとしている「ライブの真空パック」を具現化したいと思っています。絵画や彫刻などカタチのあるものは美術館に収蔵できますが、生演奏を残すことはできないですよね。それを弊社の持つ技術を使い、音楽の体験を無形文化遺産として残したいと思っています。

◆angleについて
angleは解決に向かっていない社会課題解決サービスを創出していきます。

#1: MentorMe
MentorMeは挑戦者とメンターをマッチングするプラットフォームです。
シリアルアントレプレナーなど1,500名弱のプロ人材に、相談・カベウチすることが可能です。シードステージの起業家から東証一部上場企業の新規事業立ち上げまで、6,000時間以上のサポートを提供してきました。(自治体との連携実績もあり)
https://mentorme.co.jp/

#2: angle planet(beta)
カーボンクレジットやエコツアーを組み合わせて、ビジネスとしての自然保護区設立を目指します。
https://angleplanet.com/

◆ValueAmplifierについて
ヤマハ株式会社のボトムアップ型新規事業提案制度。2015年開始、今年で9年目。選考を通過したアイディアは価値検証活動にてビジネスとしての実現性を検討する。ValueAmplifierを通して提案者の熱い想いを実現し、新しい価値が続々と湧き出るヤマハを目指す。

#Real Sound Viewing
ヤマハの手掛けるライブの真空パックをコンセプトにしたライブ再現システムです。「遠くて行けない」、「チケットが取れない」、「亡くなってしまった」、「解散してしまった」など様々な理由で見ることのできないライブの体験を保存し、追体験できるようにするシステムと、その体験を世界中の人々にと届けるプラットフォームの実現を目指して活動しています。

最終ゴールとしてポップスやロック、HipHopのような現代音楽だけではなくクラシックや民族音楽など世界中の様々な音楽の体験そのものを無形の文化遺産として残していくことができるようにプロジェクトを推進しています。
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/53186/

◆Venture Café Tokyoについて
Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。
http://venturecafetokyo.org/

◆「Rocket Pitch Night」とは
2019年から開催のVenture Café Tokyoのシグネチャーイベント。アントレプレナーシップ全米 №1 のバブソン大学のピッチフォーマットをもとにした取り組みを日本向けにアレンジ。参加者がそれぞれのビジネスアイデアを 3 分間で紹介し、経験豊富なコメンテーターや観客からフィードバックを得られる機会を作り、起業に向けた最初の一歩を踏み出す機会を提供します。累計550組5,000名以上参加の日本最大級ピッチイベントとなっています。

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Venture Café Tokyo
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Written by Venture Café Tokyo

Innovation Community Builder in Tokyo.

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