HAPPEN #25: Wo-one 犬飼 奈津子さん

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今回、ご紹介するのは「NAGOYA CONNÉCT Weak Ties 女性コミュニティ」のコアメンバーの一人でもある犬飼奈津子さんです。長年、広報として活躍してきたジェイアール東海髙島屋を退職し、今までの経験を活かして企業広報の内製化サポートなどを行う会社「Wo-one」を設立。独立直後から多忙な日々を送っているといいます。

|敷かれたレールに乗っているだけでは息子の道標になれない

――長年勤務してきた会社を辞めて独立というのはそれなりの覚悟が必要だと思いますが、どのような経緯があったのでしょうか?

新卒で株式会社ジェイアール東海髙島屋に入社し、5年目から約15年間、広報の仕事に携わってきました。「日本一露出する百貨店」を目標に、着任当時年間100件程度だったテレビ取材を500件近くへと導きました。1日1億売れるバレンタイン催事として有名な「アムール・デュ・ショコラ」の PRでは、メディア PR から、SNS 運用までを担当し売上に貢献しました。広報の仕事には誇りを持って取り組んできたのですが、年齢的に管理職を目指すことを打診されており、そうなると今までとは仕事内容が変わってきます。本当にこのままでいいのかと違和感を感じるようになったのは、二人目の子供が発達障がいであるとわかった時です。皆と同じようにすることが難しい息子に対して「みんなと同じじゃなくていいから、何か好きなことを見つけたらそれを一生懸命にやりなさい」と伝えるようになりました。息子にそう言いながら、自分自身は「敷かれたレールに乗っている」そんな生き方は息子に対して説得力がないと思ったんです。

「息子の道標になる」これが私の人生の目標ですが、子どもに誇れる自分であるためにも、会社から求められる自分を生きるのではなく、好きな仕事である広報の道を突き進んでいこうと覚悟を決め、2023年5月末に退職、上の子の誕生日である6月6日に会社を設立しました。社名のWO-ONEとは「Woman」と「One」を掛け合わせた造語で、女性と男性の枠を超えて、一人ひとりが自分らしく輝く未来を願っています。タカシマヤ時代の上司が一緒に考えてくれました。

――どのようなきっかけでNAGOYA CONNÉCTに関わることになったのでしょう?

NAGOYA CONNÉCT Women and Diversity Program Managerの松葉由紀子さんに声をかけてもらったのが最初のきっかけです。共通の知人が「パワフルで面白い人がいる」と松葉さんに私のことを紹介してくれて、まずはNAGOYA CONNÉCTでセッションに登壇してみないかと誘っていただきました。そのセッションから約2か月後の2022年4月にNAGOYA CONNÉCT Weak Ties女性コミュニティが発足し、その際に松葉さんからメンバーにならないかとお声がけ頂きました。

“女性の活躍”というとどうしても東京に集中しがちで、優秀な女性は首都圏に流失してしまうという課題があります。また名古屋には「女性は家庭を守るべき」という風潮が今も根強く残っており、女性がキャリアを築きにくいという地域性もあります。もちろん名古屋にもパワフルな女性はたくさんいます。そういう人たちがメッセージを伝えていけるような場があるといいよねということで発足したのがNAGOYA CONNÉCT Weak Tiesです。これからの私たちの目指す働きかた、生きかたについての対話を重ねながら、毎月1回NAGOYA CONNÉCTでセッションを開催するほか、毎月第1金曜日にはコミュニティのメンバーでオンライン懇話会を開催しています。現在約70人がコミュニティに参加しており、その中の10人がコアメンバーとしてセッションの企画や運営などを行っています。

コミュニティの約束事として、上下関係はナシ、マウントはしない、相手の意見を一方的に否定したりダメ出しするようなことはしない、ということなどを掲げています。また“共感”とともに“違和感”も大切にしています。属性や背景の違うメンバーが集まれば違和感を覚えることはあるはずなので、それを隠すのではなく発言しやすい環境づくりに努めています。スピークアウトするということもコミュニティの大きなテーマの一つなのですが、多様性を尊重するという大前提があるからこそ、心理的な安全性を保つことができ、言いたいことを言えるのだと考えています。

|セッションでスピークアウトした課題を1年後にクリアできた

――コミュニティに参加することで自分自身に大きな変化があったそうですね。

まずよかったと思うのは、会社の中だけでは知り合うことが難しい様々な属性の人たちと接することで自分を客観的に見ることができるようになったことです。実は私、自己肯定感が低く、自分に自信が持てないんです。当時は、大企業から外に飛び出してやっていけるのだろうかとすごく不安があったのですが、いろんな方から、私が今までやってきた実績はすごいことだと評価していただき、すごく勇気をもらいました。

コミュニティ設立後、NAGOYA CONNÉCTで行った第一回目のセッションでは、コアメンバー全員が登壇し、各々が抱いていた違和感を書き出してそれをスピークアウトしました。その時、私が書き出したのは「こうあるべきからの解放」でした。当時の私はまだタカシマヤの社員で、このまま敷かれたレールに乗る生き方でいいのか?などモヤモヤしたものは感じつつ、「この会社で勤め上げることが周りが私に望む姿だ」と自分に言い聞かせているような部分がありました。息子のことを発端にいろんなことに違和感があったものの、自分自身がそれを押さえ込んでいたんです。でも、セッションでその違和感を声に出し言語化することで、同じような思いをしているのは自分だけではないことがわかり、共感してくれる人もたくさんいることを実感しました。違和感を声を出すように意識したことで、自分の考え方もどんどん変わって行き、約1年後には会社を辞めて独立を果たしました。1年前に掲げた課題をクリアできたと思うと感慨深いものがあります。

――NAGOYA CONNÉCT Weak Tiesは精神的、実践的なアドバイスをもらえる場にもなっていると聞きました。

メンバーとは私が会社員だったころからの悩みなどを共有しています。私の性格もよく理解したうえで応援してくれるので心の支えになっています。さらに、具体的なアドバイスをもらえるのもすごく助かっています。私は今まで会社員としてお給料をもらう形でしか働いたことがなかったのですが、メンバーの中には自分で起業している人、女性の起業支援をしている人がたくさんいます。例えば、提供するサービスの価格設定にしてもどのくらいにすれば良いのかわからず安価に設定していたら「あなたの市場価値はそんなものじゃない」とか「あなたのことだから、頼まれてもいないことをサービスでやってあげたりしそうだけど、ちゃんと交渉してその分の対価をもらいなさい」などとお叱りを受けたりしました(笑)。自分が知らない知見をたくさんいただき、身近にこういう場があるのは本当にありがたいなと思っています。また、コミュニティのメンバーから退職直後にお仕事の依頼も頂き、本当にありがたいと思っています。

|違和感を見過ごさず、一歩を踏み出すのが大切

――今後の抱負やアドバイスはありますか?

独立を決めた時は、まずは個人事業主としてスタートして、軌道に乗ってきたら法人化しようと考えていたのですが、会社を辞めると周囲に言ったとたん「それならぜひ仕事をお願いしたい」といろんな方からお声がけいただきました。ありがたいことに想定を超えるお仕事の依頼があり、予想外のロケットスタートとなってしまいました(笑)。今もまだあたふたしている毎日ですが、「犬飼さんが頑張っている姿を見て私のモチベーションも上がりました」という言葉をいただくことが多くなりました。自分が頑張ることが周りの人たちにもプラスの影響を与えられるのは嬉しいことですよね。私は、キラキラの起業家になるのではなく、親近感を感じられて「犬飼さんが頑張っているなら私も頑張れそう」と、自分の身近な人たちに希望や勇気を与えられる、そんな存在でありたいと思っています。今後は「能力はあるのに発揮できていない人たち」をサポートするなど、女性のキャリア支援のような形で還元することも考えています。

自分の経験からアドバイスとして言えるのは「違和感を見過ごさないこと」ですね。日常を変えるのには大きなリスクも伴うので、その違和感をもみ消そうとして悶々と日々を過ごしている人は少なくないと思います。狭い視野でものごとを見ると、閉塞的な世界に縛られてしまいがちです。でも全く違う視点を持った人たちと接していると、思っている以上に広い世界が見えてくるものです。“違和感”は心の合図なので、それを無視せずきちんと向き合い前に進むことをお勧めします。日常とは違う世界にどんどん踏み出していくことが大切です。私自身も違和感を自分の中で見過ごさずに一歩踏み出したからこそ、今の自分があると思っています。

◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café

Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。

http://venturecafetokyo.org/

NAGOYA CONNÉCTは、名古屋市を主催として、ボストン発、世界6ヵ国16都市で活動するVenture Caféが名古屋で運営するイノベーション促進/ 交流プログラムです。(なごのキャンパスにて毎月第2・第4金曜日開催)

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Written by Venture Café Tokyo

Innovation Community Builder in Tokyo.

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