Happen #6: SAKE FAN
”同じビジョンに共感した仲間でプロジェクトを進めたほうが、お互いにエネルギーを発信しあえて、良いサイクルができると思うんです。やっぱり、「仲間集め」って大切ですね。”
アントレプレナーシップという旅は、いわば仲間集めの旅とも言えるのかもしれません。今回は、大手IT企業の新規事業担当者としてサービス開発を行っている堀野さんに、ご自身のこれまでの「旅」の軌跡とVenture Café Tokyoとの接点から起こった「HAPPEN」についてお話をお伺いしました。
今日はありがとうございます!まずは簡単に堀野さんのことについてお伺いできますか?
SAKE FANファウンダーの堀野です。現在の会社には新卒で入社して、これまで複数のサービスの企画開発に携わってきました。例えば、B2Cの翻訳アプリケーションや、訪日外国人の誘致を求める自治体や民間企業向けの広告配信サービス等を手掛けてきました。
2020年に入ってから、海外向けの新規事業企画を0から立ち上げるというプロジェクトの検討を開始しました。今は、Crewwさんの手がける「Startup Studio」というプログラムに参加しながらサービスの立ち上げに取り組んでいます。
なるほど。もう少し具体的に今、取り組んでいることをお伺いできますか?
今、取り組んでいるのは、外国人に対する日本酒の情報提供/ECービス「SAKE FAN」です。
サービスページ: https://sake-fan.studio.design/
もともと日本酒が好きで。笑 ハマったきっかけは、岩手県の赤武や佐賀県の七田っていうお酒だったんですけど、日本酒ってこんなフルーティーな味わいが出せるんだって、それから色々な日本酒を飲んできた感じです。
プライベートや仕事でも、海外によく行く機会があったんですけど、日本酒は和食が無形文化遺産登録されたあたりから、獺祭などの有名な銘柄の認知が高まってきたなと感じていました。一方で、スーパーや小売店ではほとんど扱っていないし、レストランでも提供されていない。
訪日客向けのアンケートでは、8割程度の旅行者が日本酒に興味を持っているというデータもあるのに、なぜこんなに流通していないんだろう?というのが素朴な疑問でした。加えて、日本酒の海外輸出の市場規模は250億円程度なんですが、ワインはフランスだけでも1兆円規模ある。日本酒のポテンシャルは高く、まだまだ伸びしろがあるんじゃないか、というのがこのアイデアを考え始めたきっかけです。
最初は、訪日客のおみやげ需要であったり、帰国後でも継続して日本酒を購入したいというニーズがあるんじゃないか、と仮説を立て、アンケートで仮説を検証するとともにペルソナを具体化していきました。さらにペルソナ像と一致する外国人に対してインタビューを行い、外国人が抱える課題を深掘りすることに時間を費やしてきました。
そこから浮かび上がった課題は、ざっくり言うと、情報不足、理解不足。例えば、酒蔵さんのこだわりや製法の違いが知りたいのに、自国の言語で得られる情報が少ないため知ることができなかったり。あるいは、一度美味しいと感じたお酒をリピートしたい、と思っても銘柄が読めないので記憶に残りにくい、注文できない、といった声があるとわかってきました。
そうした声をどんどん深掘りしていった結果、辿り着いたのは「もっと美味しい日本酒に出会いたい。より良い味わいを経験したい。」というインサイトでした。そうした日本酒に出会うため、最も大切な基準は、様々な情報ではなくシンプルに「味」です。そこで今、我々は「味」を頼りにより良い日本酒をレコメンドするサービスを立ち上げようとしています。
ちなみに、社内ではなく社外の「STARTUP STUDIO by Creww」を活用して新規サービスを立ち上げるというのは、どういうことでしょうか?
一つは、社内に閉じた検討だと、どうしても提供者目線になってしまいがちということ。これは自分自身の経験と反省から得た教訓ですが、初めは消費者目線でスタートしても、少しずつ提供者の理屈や思いが強くなっていく。なので、最初から最後まで消費者・利用者に寄り添いながらサービス開発ができるよう外部を巻き込みプロジェクト化とすることを考えました。Crewwさんは、Venture Café Tokyoを含む外部パートナーの繋ぎこみや、メンタリングの機会などを用意していくれていて、そうったサポートを得ながらサービス開発に専念できます。
もう一つは、「仲間集め」ですね。STARTUP STUDIO by Crewwには何らかのアイデアを形にしたいという想いを持った方々が個人で参加していて、そうしたマインドセットを持つメンバーの助力を得られるというメリットがあります。これを社内の中で進めようとしても、組織の壁にぶつかったり、スキルを持つ社員の稼働確保が難しかったりして意外と仲間集めが難しい。一方、オープンなプロジェクトにすると、ビジョンに共感してくれた人や適切なスキルを持った人たちが、社内外問わず柔軟に集めやすくなると感じています。
ありがとうございます。「仲間集め」ということで言うと、Venture Café Tokyoが4月に行ったRocket Pitch Nightが役に立ったとお伺いしてます。Venture Café Tokyoとの接点はどのようなものだったんでしょうか?
はい、失礼な話、最初はVenture Café Tokyoの取り組みを知らなかったんですけど、Crewwさんの紹介でVenture Café Tokyoが4月に行ったRocket Pitch Nightに参加させてもらいました。仲間集めのためにも、最初にVenture Café で3分ピッチしてみたらという軽い感じで。笑
正直、その時はSTARTUP STUDIO by Crewwのプログラムが始まったばかりで想いやビジョンはあったんですけど、何が課題だったり、どういうソリューションが良いのか、まだわかってなかったんですね。Yコンビネーターのピッチの資料なんかも見ながら、自分たちの仮説をオーディエンスにぶつけてみよう、そして仲間集めをしよう、ということを念頭において準備しました。検討の初期のタイミングでピッチの機会があったのは、今振り返ると本当によかったです。準備のプロセスを通じて、だいぶ考えが整理できたように思います。
仲間集めの成果はどうでしたか?
色々あって、一つは01 Boosterの川島さんとの出会いですね。Rocket Pitchでピッチのコメンテーターをしていただいたことをきっかけに定期的に壁打ち役をしてもらっています。最初に立ち上げた仮説は、酒蔵ツーリズムであったり、おみやげ購買であったり、もともとインバウンドのイメージだったんですが、川島さんと話してPoC(Proof of conceptの略:ソリューションの仮説検証)にあたって、マネタイズの方針を絞ったほうがいいとアドバイスをもらったのもあって、今は海外向けの情報提供 / ECにサービスに軸足を移しました。
あとは、サービスに対するフィードバックや有用な情報を交換したりする目的で、我々の思いやビジョンに共感していただけている人たちとFacebookの非公開グループをつくっているんですけど、Venture Café Tokyoで出会った方々も何人か入っていただいてます。グループには私を含むコアメンバー4名とサポーター12名の計16名が参加しているんですけど、仲間が増えていくのってワクワクしますよね。
Rocket PitchをきっかけにVenture Caféとはグローバルにもコラボレーションしたと聞いています。そちらの話もお伺いさせてください。
はい、Rocket Pitchのあとに海外の方の声をさらにヒアリングしたくて、Crewwさんから改めてVenture Café TokyoのLisaさんを紹介してもらって、Venture Café SydneyとWarsawに繋げてもらいました。どちらも東京と同じように今はオンラインでThursday Gatheringを行っているので、東京からオンラインネットワーキングプラットフォームであるRemo上で出展させてもらいました。宣伝もしていないので、人来るのかな?と思ってたんですけど、蓋をあけてみたら4–5人ほど来てくれて十分話をすることができました。
Sydneyでは、日本酒に詳しい大学関係の方と出会うことができて、今でもメール交換していたり、インタビューにも対応いただいたりしています。Sydneyは日本や日本酒に対する理解が結構あったんですけど、Warsawはまた状況が違うかったのも発見でしたね。CHOYAは知っていてもSAKEは知らないみたいな。Warsawでは、むしろ現地で好まれているお酒のことやお酒の飲み方について話を聞いていました。
東京以外のVenture Caféで出展というと「アウェー」に感じる方もいると思うんですけど、コミュニケーションがうまくいったポイントとかってありますか?
実は、そもそもサービスの対象がお酒だったからかもしれないんですけど、結構お酒に関わる雑談ばっかりしていたんですね。それが意外とよかったのかもと思っています。あとはRemoってショートに滞在して、皆さんすぐに別のテーブルへ行くんですよね。なので、自分のやってることは1分、2分で紹介して、仕事に関わることは連絡先交換して後日やりとりするような工夫はしました。先ほどのシドニーの方へのインタビュー依頼なんかも、その場というより事後で行いました。
ありがとうございます!それでは、最後にメッセージをいただくことはできますか?
そうですね…。Venture Caféに限らず、自分のアイデアを外にどんどん発信することは恐れずに積極的にやっていったほうが良いと思っています。他の人には真似のできない特異なアイデアを手がけているなら別だと思うんですけど、そういうケースってあまりないと思うんですよね。大抵、世界の誰かが同じようなアイデアを考えていたりする。たったら、むしろどんどん色んな人の意見を取り込んで、ブラッシュアップして、前に進んでいったほうがいいと思うんですよね。
加えて、外に発信することで、思いやアイデアに共感してくれる仲間も集めることができるのも大きいです。同じビジョンに共感した仲間でプロジェクトを進めたほうが、お互いにエネルギーを発信しあえて、良いサイクルができると思うんです。やっぱり、「仲間集め」って大切ですね。
ありがとうございました!
◆Venture Café Tokyoについて/ About Venture Café
Venture Café Tokyoは”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織です。Thursday Gatheringは毎週木曜日16時-21時に開催されるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・イベントです。教育セッションや安全で快適なネットワーキング空間の提供を通じて、多様な人々が集う場を提供し、上記のミッション達成を図ります。