HAPPEN BLOG #28
Booko 長谷川恵子さん
米国・バブソン大学の革新的な起業家教育メソッドを取り入れたVenture Café Tokyoの起業家教育プログラム『Community Campus(※)』。2024年4月4日に第1期が開催され、11月14日には第4期が開講されました。今回は2024年6月20日〜8月22日に開講された第2期に参加した長谷川恵子さんにお話を伺いました。
※以下Community Campus(読み:コミュニティ キャンパス)
|起業について学ぶ必要性を感じていた時に開講の情報をキャッチ
――自己紹介をお願いします
私は出版社で約25年間、書籍編集の仕事に携わっています。また、本を作るアプリ「Booko」と、Bookoで作った本を発売する出版社「Booko出版」を運営しています。もともとは勤務している出版社の事業として企画したものなのですが、やはり組織というのは柔軟に動けない部分もあり、思い切って自分自身の事業として立ち上げることにしました。本業が忙しいうえにITに疎いこともあり、当初の予定より時間がかかってしまいましたが、2023年にベータ版をリリースしました。
――Bookoというのはどういうサービスなのでしょう
テンプレートを使って本を作成し、1冊からAmazonで紙の本として出版できるサービスです。商業出版では売れる見込みのある企画しか扱わないため、売れ線の2番煎じ、3番煎じになりがちです。また、自費出版では200〜500万円程度の初期費用が必要ですが、Bookoではテンプレート代の19,800円から本を作ることができます。従来の出版ビジネスモデルから脱して、出版の“民主化”を目指したいと考えました。商業出版では難しいニッチな企画でも、少ない費用で出版できるなら非常に面白いコンテンツが生まれるのではないかと期待しています。
――Community Campusを受講しようと思ったきっかけはありますか?
Venture Café Tokyoからのメールがきっかけです。以前、Bookoのシステムを担当しているエンジニアに誘われてVenture Café Tokyoに参加したことがあり、その後も定期的にメールが来ていました。毎回チェックしていたわけではありませんが、たまたま目にしたメールでCommunity Campusが開講されることを知りました。Bookoを立ち上げたものの起業については何も知らないので、起業のイロハを学ぶ必要があると思っていたところだったので、あまり深く考えずに申し込みを決めました。また、コミュニティというのはどういう人が集まっているかということも重要だと思いますが、以前、Thursday Gatheringに参加した経験からVenture Café Tokyoにはとてもレベルの高い人たちが集まっているという印象があったので、その信頼感もありましたね。
ただ、時間のやりくりはとても大変でした。本業とBookoの運営で、ただでさえ忙しいところにCommunity Campusが加わったので、昼夜を問わず働いているような状況になってしまいました。私が受講したのは2024年6月から約2か月間のコースでしたが、もし受講期間が半年だったら通い切れなかったかもしれませんね。
|横のつながりの重要性を感じた
――実際に受講してみて印象に残ったことはありますか?
単にアントレナーショップの基本的な理論を学ぶだけなら書籍でも可能だと思います。でもCommunity Campusでは座学では習得できないこともたくさんありました。
すごく学びになったことの一つは、ビジネスで成功するには人としての魅力が不可欠だということです。例えば、マーケットイン・プロダクトアウトなどを実践するにも情熱がベースにないとうまくいかないということを学びました。プログラムの最終日にはピッチを行いますが、そこに到達するまでには多くの人と交流を深め、協力し合いながら進めていく必要があり、人との関係性が重要になります。結局のところ「人が大事」だということを実感しました。
また、Community Campusで知り合った人たちは、年齢も職業も様々で関係性も非常にフラットです。会社とは関係ないところで仲間を作るというのは今までやっていなかったことなのですごく新鮮で面白かったです。
私は仕事柄、いろんな人たちとお話しする機会はたくさんあるものの、お付き合いとなるとやはり仕事関係がメインとなってしまいます。ビジネス上のお付き合いだとどうしても損得勘定で動く部分がありますし、会社や学校での関係性というのは、「上司と部下」「先生と生徒」など縦の関係性です。一方、Community Campusで一緒にピッチの練習をしたり、自分の考えたビジネスモデルを誰かに聞いてもらうというのは横のつながりです。起業というのはこういう横のつながりを構築する必要があるのだと感じました。このような関係性の構築は、起業だけでなくいろんな場面でセーフティーネットになると思います。今までバリバリの会社員人生を歩んできた人は、一度こういうコミュニティに参加してみると新たな気づきがあるかもしれません。
|自らアクションを起こすことで流れが変わってきた
――Community Campusの受講前と後で何か変化はありましたか?
2024年9月に開催された「ROCKET PITCH NIGHT KANSAI 2024」でピッチをする機会に恵まれました。Community Campus を受講する前なら「人前でプレゼンするなんて絶対に無理」とピッチイベントに参加することなど考えもしなかったと思います。「ROCKET PITCH NIGHT KANSAI 2024」に参加したからといって、資金調達やビジネスへの繋がりはまだありませんが、すごく大きなチャンスをもらえたと思っています。
50代も半ばになると「失敗したくない」とか「うまくやらなければ」と保守的になりがちですが、起業してしまったからにはそんなことは言っていられない、とにかくやるしかないと改めて気持ちを奮い立たせることができました。
以前なら「忙しい」とか「この人と会っても企画は成立はしなさそう」などとお断りしていたような状況でも、今はリミッターをはずしてほぼ無制限に人と会うようにしています。Community Campusでは「Action Trumps Everything(行動はすべてに勝る)」と教えられますし、「犬も歩けば棒に当たる」ではないですけど、いろんなところに出かけていき、Bookoのビジネスモデルや思い、直面している課題などを言いまくっていたら、意見をもらえたり、人を紹介してもらえるなど、何かしらの動きがあります。編集者というのは裏方の仕事なので今までは自分が表に出なくても済んでいたのですが、それではダメだということに気づいて行動すると、自分だけではなく周りも変わってきたと思います。
――Community Campusに参加しようか迷っている人がいたらどのようにアドバイスをしますか?
興味があるなら即、参加すべき。迷ってる場合じゃないですね(笑)。私の周りでも起業したいという人がいたら、絶対に受講した方がいいと勧めています。また、今すぐ起業を考えているわけではない会社勤めの人でもCommunity Campusに参加することで仕事に対する意識は変わると思います。
それと、先にも少し述べましたがどういうコミュニティかというのは結構、大事なところ。Community Campusは講師陣もすごい方たちが揃っていますし、受講生も属性のきちんとした人たちが集まっています。そういう人たちとフラットな関係を築くことができるわけですから素晴らしい環境だといえますよね。
――今後の抱負はありますか?
Booko出版から本を100冊出すことですね。Bookoのテンプレートとシステムを使った本作りは誰でも行うことができますが、Booko出版から本を出すには審査を設けています。マネタイズを優先させるなら、テンプレートを多く販売して、内容に関係なくどんどん出版させる方法もありますが、特に最初の段階では出版する本の質に徹底的にこだわりたいと思っています。ブログを書くように誰でも簡単に本が作れる環境が整っていますし、勉強会などを継続的に開催して、タイトルや内容の質を保つためのノウハウも蓄積してきているので、極端に偏った内容の本が出る心配は少ないと考えていますが、それでも、特に最初のうちはブランディングを重視するつもりです。
そのほかにも、システムの開発をさらに進めるなど、やりたいことや課題は山ほどありますが、いずれはすごいベストセラーを出したいと思っています。まずは質の高い本を出版することで信頼性のある「きれいな水場」を作り、読者や作り手を引き寄せ、例えば、世界のニッチな料理を紹介するシリーズなど、ファンが集まるようなコンテンツを企画したいと考えています。
長谷川恵子さんが運営するBooko
https://www.booko.co.jp/
◆Community Campusとは
Community Campusは全ての人に向けた起業家育成プログラム。アントレプレナーシップ教育で31年連続全米№1のバブソン大学の起業家教育方法論を始めとする、世界最先端の教育手法を用いて、グローバルな視野を持ち、不確実性やリソースの制約を克服しながら新しい機会を追求したいと考える、全ての方の起業家精神の育成と事業創出の伴奏支援を提供する。
※本案件は、東京都が推進する「未来を切り拓く10×10×10のイノベーションビジョン」の実現に向けた「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)」の採択事業。
https://venturecafetokyo.org/programs/community-campus/