HAPPEN BLOG #29
エスビー食品株式会社 齊藤聡一郎さん
米国・バブソン大学の革新的な起業家教育メソッドを取り入れたVenture Café Tokyoの起業家教育プログラム『Community Campus(※)』。2024年4月4日に第1期が開催され、11月14日には第4期が開講されました。今回は2024年6月20日〜8月22日に開講された第2期に参加した齊藤聡一郎さんにお話を伺いました。
※以下、Community Campus(読み:コミュニティ キャンパス)
|新たなことにチャレンジしようとCommunity Campusを受講
――自己紹介をお願いします。
エスビー食品株式会社に新卒で入社し、現在社会人4年目です。最初の3年間は量販店向けの営業などを担当し、2024年4月から「食文化未来研究所」という部署で働いています。「食文化未来研究所」では、目指すべき未来像を具体化し、その目標を達成するために現在からどのようなステップを踏むべきかを逆算して計画を立てるバックキャスティングの手法を用いて、当社が未来に向けて取り組むべき事業や課題を特定し、新規事業の企画や外部とのネットワーク構築などに取り組んでいます。
――どのような経緯でCommunity Campusを受講することになったのでしょう?
「食文化未来研究所」の先輩から勧められました。先輩は以前、Venture Café TokyoのThursday Gatheringに参加したことがあり、定期的にメールが届いていたそうです。そのメールにCommunity Campusの情報が掲載されており、「こういうのがあるから参加してみてはどうか?」と提案してくれたのです。実は私はこの部署に配属されるまでは「アントレプレナー」という言葉さえ知らなく、今までとは全く異なる業務に取り組むために何をすればよいのか模索していたところでした。当時は虎ノ門ヒルズに足を踏み入れたこともなかったですし、いろいろ不安もありましたが、新たなことにチャレンジしたいという気持ちもあり受講することにしました。
|ニーズを正確にとらえることの重要性を実感
――Community Campusを受講してよかったと思うことはありますか?
Community Campusに参加してよかったと思うことの一つは、起業したい!と志す人たちと深い関わりを持つことができた点です。年齢も職業もバラバラな人たちが集まって意見を交わすことで自分の視野も広がり、物事を異なる角度から考えられるようになったと思います。社内の人間関係ではどうしても「仕事に対する評価」という視点が入りがちですが、そういうものが一切ないフラットな関係性というのも心地よかったですね。
また、講師の話を一方的に聞くのではなく、チームでディスカッションを重ねるなど、自分の頭と口を駆使する「体で覚える」ようなスタイルだったので、学んだことがしっかり身につく感覚があったのもよかった点です。
Community Campusでは数えきれないくらい多くのことを学びましたが、特に大きな気づきとなったのが「世の中の課題やニーズを正しく捉えることがいかに重要であるか」ということです。今までは「自分が欲しいものは他の人も欲しいはず」と勝手に思い込んでいたのですが、それは大きな誤解。Community Campusで仮説検証のプロセスを学ぶことで、「自分が欲しいものが必ずしも他の人も欲しいものではない」ということを思い知らされました。
――Community Campus ではチームで課題に取り組むそうですが、印象に残った出来事はありますか?
私たちのチームは「高齢者が安心してペットを飼うにはどうしたらよいか」という課題を設定しビジネスプランを構築することにしました。それぞれが自分の周りの人たちにヒアリングを行ったところ、「高齢者と限定する必要はないのでは?」ということになったのです。頭の中で考えていたことと、現実に起こる問題というのは違いがあることに気づき、課題設定を大きく変えることにしました。チームで話し合ったからこそ、比較的早い段階で方向転換することができましたが、もし自分一人だったら最初のアイディアに固執してしまった可能性が高いと思います。検証の重要性やチームで行動することの大切さを知るよい機会でした。
|ビジネスモデルへの考察が深まり、ピッチも自信がついた
――Community Campusの受講前と後では自分自身に変化はありましたか?
先にも述べましたが、この春に「食文化未来研究所」に異動した当初はアントレプレナーという言葉さえ知りませんでした。業務に必要な知識を習得するために、例えばデザイン思考に関する本を読んでみるなど自分なりに勉強はしていたのですが、いまひとつピンとこない部分がありました。同じ部署の人たちに自分の考えをぶつけて意見交換しても、消化しきれていないというか、モヤモヤするものがずっとあったんです。でも Community Campusを受講することで「あれはこういうことだったんだ」と、まさに腹落ちしたという感じで、やっとモヤモヤが晴れました。
また、以前の私はビジネスモデルというものを深く考えることはほとんどありませんでしたが、Community Campusを受講してからはビジネスモデルを俯瞰的にみてジャッジできるようになってきました。今までは新しいサービスや商品を見ても、単に面白そうというくらいしか感じていなかったのが、「どこにニーズがあり、どのような課題を解決し、どのように収益化しているのか」といった観点で分析する習慣が身につきました。
ピッチに自信がついたのもCommunity Campusのおかげですね。営業経験があるので人前で話すこと自体には抵抗はなかったのですが、自社の製品を説明する場がほとんどで、自分の考えをコンパクトにまとめて話すというような機会はほとんどありませんでした。
でもCommunity Campusで鍛えられたおかげで「今からピッチやって」と言われても対応できると思います(笑)。以前はちょっと敷居が高いイメージを抱いていたVenture Café TokyoのThursday Gathingにも気後れすることなく参加できるようになったのも変化の一つです。
|社内起業を応援する体制を整えたい
――Community Campusの受講を検討している人にアドバイスはありますか?
自分のような企業勤めの人間には“起業”という言葉は少し重く感じてしまうかもしれません。受講する前は、起業家教育プログラムなので、自分のビジネスをローンチしている人たちばかりなのかと思っていたのですが、意外にもステージが似通っている人が多くいました。「まだ何も考えていません」という方もいるので、身構える必要はないと思います。受講する前は、意識高い系で冷たい感じの人が多そうなイメージを抱いていたのですが、実際はそんなことは全くありませんでした。参加者はフレンドリーな人たちばかりで、みんなで学ぼうというポジティブな雰囲気の場です。「ここに来れば成長できる」ということは保証できますし、迷っているならぜひ参加してほしいと思います。
――今後の目標や抱負を教えてください
社内起業を応援する体制を整えることが目標です。できれば社内アクセラレーターのような仕組みを作りたいと考えています。「食文化未来研究所」は設立してまだ約3年の新しい部署ですので、組織体制や業務の進め方を模索している段階です。私自身、部署を異動してからしばらくはモヤモヤ感がぬぐえませんでしたが、一人で悩みを抱え込んでいたことが大きな原因だと思っています。私はCommunity Campusに参加することでモヤモヤもすっきり解消できましたが、社内には私と同じように悩みを抱え込んでしまっている人も少なくないと思います。実際に壁にぶち当たった経験がある自分だからこそ、そういう人たちに寄り添い、サポートできることもあると考えています。社内起業をする人がどんどん出てくるような風土づくりを推進したいと思っています。
◆Community Campusとは
Community Campusは全ての人に向けた起業家育成プログラム。アントレプレナーシップ教育で30年連続全米№1のバブソン大学の起業家教育方法論を始めとする、世界最先端の教育手法を用いて、グローバルな視野を持ち、不確実性やリソースの制約を克服しながら新しい機会を追求したいと考える、全ての方の起業家精神の育成と事業創出の伴奏支援を提供する。
*本案件は、東京都が推進する「未来を切り拓く10×10×10のイノベーションビジョン」の実現に向けた「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)」の採択事業。
https://venturecafetokyo.org/programs/community-campus/