【開催レポート】OIC CONNÉCT #08

Venture Café Tokyo
16 min readApr 26, 2023

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多様な人が交流し、学びの機会を創出するプログラムとして立命館学園とVenture Café Tokyo(ベンチャーカフェ)が主催する「OIC CONNÉCT(オーアイシー コネクト)」の8回目が、2023年4月7日 (金) に立命館大学 大阪いばらきキャンパスにて開催されました。

OIC CONNÉCT #08

OIC CONNÉCTは、毎月1回、立命館大学 大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市、通称OIC)にて開催されるイベントです。参加者はイノベーター達による講演やワークショップ等を通じて、学びながらネットワークを広げられます。

第8回となる今回は、以下の3つのセッションが行われました。

  • WEB3に特化したアクセラレーションプログラムの卒業生トーク ~未来社会の実現に向けた先端テクノロジービジネス支援~
  • FOUNDER INSTITUTEを利用したDAY1から始めるグローバルに強いスタートアップの作り方
  • KRPが取り組む起業支援のカタチ

会場では、スタートアップや大学生が作ったプロトタイプを試せるデモテーブル、OIC CONNÉCT-U #2「資金調達の基礎」という勉強会が催されました。

オープニングでは、OIC CONNÉCTやVenture Café Tokyoの世界観、参加者がお互いに安心して楽しむためのコツや簡単なコミュニティ・クレドの話があり、セッションに移りました。

WEB3に特化したアクセラレーションプログラムの卒業生トーク ~未来社会の実現に向けた先端テクノロジービジネス支援~

大阪産業局 ソフト産業プラザTEQSでは、先端テクノロジービジネスに挑戦する人の取り組みを支援しています。2022年度は、日本でも数少ないweb3に特化したアクセラレーションプログラムを実施し、受講生それぞれが実現したいアイデアをカタチにすべく、約半年間のプログラムに取り組みました。今回のセッションでは、アクセラの卒業生をパネリストに迎え、アクセラに挑戦した経緯・感想、今後の取り組みについてディスカッションしました。

Web3 アクセラレーションプログラム SUITCH

登壇者(Web3 アクセラレーションプログラム SUITCH 卒業生)

  • 山下 洋樹 氏(Hiroki YAMASHITA)
    = Virtual Motorsport Lab Inc. / CEO
  • 氏本 勝也 氏(Katsuya UJIMOTO)
    = 株式会社リコー
  • 三木 芳彦 氏(Yoshihiko MIKI)
    = 株式会社リコー

モデレーター

  • 藤井 拓朗 氏(Takuro FUJII)
    = 公益財団法人大阪産業局 ソフト産業プラザTEQS プランナー

SUITCH

はじめに藤井さんより大阪産業局のWeb3アクセラレーションプログラム”SUITCH”の紹介がありました。先端テクノロジー分野でイノベーションを起こす「新規ビジネス創出」を目指すTech特化型のプログラムであり、強力な専門家によるメンタリングや豊富なインプット、大阪産業局のネットワークを使った事業支援が特徴です。

事例の紹介として、アクセラの卒業生である2組が登壇しました。山下さんは、モータースポーツが好きでエンジニアとして活躍していましたが、モータースポーツを未来に残したいという想いで起業しました。モータースポーツの技術や文化をバーチャルで継承すべくユーザーフレンドリーなDXの開発に取り組んでいます。

大手企業のリコーで香りのデジタル化を進めている氏本さんと三木さん。香りのデジタルデータをNFTで可視化して、アートに近いオンリーワンの価値を作るという取り組みに試行錯誤しています。

選択の理由

アクセラレーションを選んだ理由、その中でもWeb3を選んだ理由について山下さんは「偶然見つけたのが正直な理由です。バーチャル上で経済圏を作ろうとする自分たちの活動との相性がいいと思いました。実際に活動してみて、人とのつながりから、Web3にする意味も考えられて、思考を深められたのがよかったです。」と話しました。

三木さんは「大きなニーズだけを狙っていいのか?もっと広いものがあるんじゃないか?それはどうやったら解決できるのか?と考えていた時に見つけたのがWeb3でした。勉強の意味もあって参加させていただいたのですが、アクセラレーション中にメンターとの出会いですぐにNFTの開発につながりました。さまざまな分野のメンターや受講生がいるのがこのWeb3アクセラレーションのおもしろさだと思います。」と理由と経験を話してくれました。

今後の展望

事業としては初期段階の2組。山下さんは「シミュレーターはまだ試作段階なので、使ってもらう人を増やしていこうと思っています。将来的には自動車メーカーとコラボレーションしたいです。」と展望を語りました。

氏本さんは「計測器のプロトタイプができたので、さまざまなデータを蓄積させていきます。香りは広くてニッチな世界なので、ユニークでマニアックな課題が多いんです。なので、小さく始めるのが重要だと思っています。そのために多くのデータを集めてWeb3を活用していきたいです。」と話してくれました。

研究成果が世に出ていくプロセスを聞かれると、氏本さんは「アカデミックな領域とアートのように展示会に出す、あとはウェビナーのような形を取らせていただくこともあります。現時点では香りの市場を広げるための啓蒙活動をしているような段階です。」と説明しました。

「香りの可視化サービスがビジネスになるのはこれからだと思います。取引先からは、今まで人間がやっていたにおいの感知をDXしたいという要望もあるので、これからの可能性が大きい分野だと思っています。」

Web3やNFTなどのブロックチェーン技術で事業や研究開発を進める2組の話に、参加者は興味深く耳を傾けていました。質疑応答でも積極的な意見交換が行われ、1つ目のセッションを終えました。

Founder Instituteを利用したDAY1から始めるグローバルに強いスタートアップの作り方

Founder Institute (以下、FI) は、起業家のスタートアップ立ち上げを支援するために2009年にシリコンバレーで設立された、グローバル・アクセラレーターです。これまでに、FIは、世界95カ国、200以上の都市で6,000以上の企業を支援し、25,000人以上のメンターを持っています。このセッションでは、FIのアクセラレーションプログラムを用いて、どのようにグローバルに強いスタートアップを作ることができるのか、なぜグローバルに通用するスタートアップになることが重要なのかを話し合いました。

登壇者

  • Erdinc Ekinci 氏
    = Co-founder, CEO, Openfor.co, inc
  • Yu Li Shein 氏
    = Co-founder and COO, Openfor.co, inc
  • Masumi Shimafuji 氏
    = Co-Founder and CEO, xRsion Inc, FI Japan 2022 Alumni
  • Min Myat Swan Pyae 氏
    = Co-Founder and CEO, Juncturex, FI Japan 2022 Alumni

Founder Instituteと卒業生

はじめにErdincさんから自己紹介とセッションの概要、日本のリーダーであるYu Liさんの紹介、そしてFIアクセラレーションプログラムの卒業生である島藤さんとSwanさんの紹介がありました。

その後、ErdincさんによるFIの組織や特徴、取り組みについての説明の中で「グローバルに強いユニコーンになれるスタートアップを作りたい」という強い想いも聞くことができました。

島藤さんはプログラム中に資金調達を得て、現在はFI卒業生のFounder Labという、世界のVCに向けてアプローチするためのプログラムに参加しているそうです。

もう1人の卒業生であるSwanさんは、ミャンマーからスカラシップで立命館大学に通いながらFIを卒業しました。スタートアップとして、人材をマッチングさせるプラットフォームを展開しています。

アクセラレータープログラムでの経験

プログラムでのチャレンジや経験について、卒業生の2人に聞きました。

Swanさんは、FIプログラムの前にスタートアップを始めていましたが、行き詰まりを感じて悩んでいたそうです。「FIについて詳しく知りませんでしたが、突破口を見つけられるのではないかと思って参加しました。マーケティングやリーガルなど、知らないことを多く学べました。学業との両立は時間のマネジメントなどとてもハードでしたが、参加してとても良かったと思っています。」と述べました。

Swanさんは現在20歳。ミャンマーからスカラシップで日本に来て、日本語も使えない中で、今に至るまでどのような困難を乗り越えてきたのでしょうか。

「ミャンマーはご存知のように政治的な状況が良いとは言えず、その影響もあって教育システムは整ってません。日本に来る前にミャンマーで大学生をしていて、なぜ学ぶのか、プロフェッショナルになるにはどうすれば良いのかを考え、自分で事業をスタートさせようと決めました。私は人を信じていますし、情熱とチャレンジ精神があります。将来的には、今の事業を発展させてミャンマーに持ち帰りたいと思っています。」と熱く語りました。

英語が得意でないという島藤さん。すべて英語で行われるプログラムにどのように取り組んだのでしょうか。

「とくにヒアリングが苦手なので苦労しました。英語は、ウェブの課題のページはすべて日本語に訳してから内容をチェックして、日本語で考えて日本語で答えを作りました。それをさまざまなウェブサービスを利用して英語に訳す、という流れで課題を提出し、ピッチも作成しました。外国人のメンターは日本語を使える人が多いですし、ピッチは難しい英語を使わず、自分が使い慣れているレベルで作成しました。」シリコンバレーでは英語を第二外国語とする人が多いため、分かりやすい英語で構成された島藤さんのピッチは高評価につながったそうです。

グローバルに強いスタートアップを作るには

グローバルなスタートアップはどのように作れるでしょうか。それぞれの意見を聞きました。

「私がスタートアップを始めたとき、profitable・skillability・fireableの3つを考慮しました。」とSwanさん。「事業として利益があること、高度なスキルを持ち、それを広げていけることが大切だと思っています。」

島藤さんはこれからグローバルにビジネスを展開しようとしています。「日本のビジネスはすごく時間がかかります。それが一番の問題です。とくにto Bだと企業の決断に時間がかかるので、収益化にも時間がかかってしまうんです。」と日本の問題点を挙げました。

「日本は細やかで高度な機能が求められるので、日本の基準に合わせてPOCを作っていくとガラパゴス化してしまいます。すると、海外展開するときに世界に合わないものになってしまう可能性が高いんです。これから小さくなっていく日本市場を見るのではなく、最初からグローバル市場へ展開していくのが大切だと思います。」

続けて島藤さんは「限られたコストでなるべく多くの収益を得るにはスピードが大切です。まず行動を速くすること。小さな失敗をできるだけ速く積み上げて、理解を深めていく。グローバルのスピード感に最初からついていく必要があります。」と強く語りました。

グローバルスタートアップに挑む2人に、参加者からは多くの質問が投げかけられました。活発な質疑応答となりましたが、惜しまれつつも終了時間をむかえました。

KRPが取り組む起業支援のカタチ

京都リサーチパーク (以下、KRP) は、新事業・研究開発などのイノベーションに向けた挑戦を行う場として、実に500の企業・団体、6,000人のプレイヤーが集っています。オフィス、ラボ、会議室といった充実したハードを構築し、ソフト面では多様なイベントや交流会等の企画を行い「魅力的な交流の舞台」を提供。「イノベーションが起きる時、研究であれビジネスであれ、当初の意図やねらいを超越した “何か” が生じている。」KRPでは多くの人が「創発の瞬間」を体感できるように創意工夫を重ねています。このセッションでは、miyako起業部@KRPをはじめ、さまざまなKRPの支援について紹介されました。

登壇者

  • 井上 良一 氏(Ryouichi INOUE)
    = 京都リサーチパーク株式会社 イノベーションデザイン部長 兼 新棟企業誘致部長
  • 田中 明子 氏(Akiko Tanaka)
    = ウエルキー株式会社
  • 山本 智一(Tomokazu Yamamoto)
    = 株式会社whicker
  • 坂井 秋太朗 (Shuntaro Sakai)
    =立命館大学理工学部 2 回生

miyako起業部とは

はじめに井上さんから京都リサーチパークとmiyako起業部の紹介がありました。リサーチパークは研究開発団地のようなもので、国や大学が運営するケースが多い中、KRPは民間が運営しているとても珍しい機関だそうです。

miyako起業部は「スケールアップを目指すスタートアップの起業を目指し、複数大学の学生・社会人が参加する部活動」です。「ビジネスプランコンテストに出るための特訓をするような活動で、誰のどんな課題をどう解決するのかという思考をどんどん深堀りして、世界のVCへピッチするような資料を作る取り組みをしています。」と井上さん。続いて部員の活躍や受賞歴についても紹介されました。

部員の活動

セッションには3名の部員が参加し、それぞれの活動について聞きました。

伴走型健康改善サービス

ミドルエイジ向け伴走型健康改善サービスを展開する田中さん。ご自身の経験から、更年期を快適に過ごす情報の提供や不調の緩和や予防の支援サービスがないことに課題を持ち、ヘルスリテラシー向上の情報提供と生活習慣改善コーチングを行っています。

「忙しい方へメリットのある情報を提供して改善を促進していきたいですし、それが独自性でもあります。今後はアプリを作って利便性を向上させるのが目標です。働くミドルエイジが、健康を維持し、キャリアをあきらめることなく自信を持って働けることでウェルビーイングが実現できる社会を創りたいと思っています。」と今後の展望やビジョンを語りました。

学生と高齢者のマッチングサービス

大学院生でありながら事業を営む山本さん。「miyako起業部で起業に関する知識を多く得られました。社会人経験はないので、大人の方とつながれて今やれているのはmiyako起業部のおかげだと思っています。」

山本さんは社会起業家として「まごとも」という学生と高齢者のマッチングサービスを展開しています。高齢者にとって孫世代の学生と友達のように関わることで高齢者のQOL (生活の質) の向上させるというサービスで、ベビーシッターの高齢版のようなイメージだそうです。

山本さんからは、どのように起業してきたかについてが共有されました。ほとんど勉強していなかったという中学時代、そして高校時代に映画「ビリギャル」に影響を受けて一念発起して大学受験に挑んだ話。「実際に大学に入ってみると、価値観の違う人が多くいることに気づきました。違う価値観の人と触れ合って視野が広がったので、若いうちに多様な価値観を知ることは大切だな思っています。」

今後について山本さんは「サービスを持続可能な形で日本に展開していこうとしています。知識・経験・価値観を若者へ継承し、ワクワクする未来を作っていきます。」と締めくくりました。

学習コミュニティアプリ開発

miyako起業部で一番若い部員の坂井さんは、起業に向けてさまざまなチャレンジの真っ最中です。「起業は誰かの課題を解決するもので、直接的に人の役に立てるのが面白いと思っています。それだけでなく、自分のこうあるべきという考えを社会に対して打ち出せる数少ない手段で、自己表現や自己実現になるのかなと感じています。」と起業に対する考えを述べました。

坂井さんは自身の経験から、私立高校や集団学習塾の生徒の成績を上げることに課題を感じ、生徒が主体的に学習したくなるような環境をテクノロジーで作ろうとしています。「テクノロジーで学習を楽しく効率化」というビジョンで、学習コミュニティアプリの開発を進行中です。

「講師が現役の経営者や教授だったりするので、日常では話す機会のない人と密に話せたことで自分のチャンスに気づけました。経験豊富な人と知り会えて学びを深められましたし、知らないものに飛び込んでいく勇気も得られました。」と坂井さんの経験を話してくれました。

3名の発表を終え、miyako起業部@KRPの活動への理解を深められたところで、今回の最後のセッションも幕を閉じました。

最後に

大阪産業局 ソフト産業プラザTEQSが支援するアクセラレーションプログラム「SUITCH 」を通じて、受講生がアイディアをカタチにする難しさを分かち合い、グローバル・アクセラレーターであるFounder Instituteよりなぜグローバルに通用するスタートアップになることが重要なのかを共に考え、京都リサーチパークが生み出す「創発の瞬間」を知り、アイディアを実装する方法や楽しさ、または難しさを得た8回目のOIC CONNÉCT。次回は5月10日(水)を予定しています。どのような学びと繋がりが生まれるのか。皆様のご参加をお待ちしています。

詳細&Sign-up:https://oic-connect-9.peatix.com/

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